検索

鈴木聡美が語る33歳で現役続行の理由 「まだやんの、私?と思わないわけではない(笑)」 (4ページ目)

  • 栗原正夫●文 text by Kurihara Masao

【「私、なんでやめないんだろう」】

 21年の東京五輪出場は逃した。新型コロナウイルスが世界中に蔓延し、五輪自体の開催が危ぶまれていた頃は「このまま競技を続けていいのか迷っていた」とし、心身ともに競技に集中できていなかったと振り返る。

 同世代の選手がプールから去っていくのを見て、「やめたい」と思ったのは1度ではなく「私まだ泳いでいていいの? 引退して、会社勤めなどをしたほうがいいのかな」と、考えを巡らせたこともあっという。

 ただ、コロナ禍が明け、それまでの日常が戻ると、鈴木は徐々に調子を取り戻し、近年の好成績につなげている。

――何が鈴木選手を突き動かしているのですか。

「記録ですね。世間の方はメダル、メダルって思うかもしれませんが、水泳って、本来は記録で勝負する競技ですので。ロンドン五輪の100メートルで銅メダルを獲ったときは、タイムを見たら自己ベストには届いていなくて、少し複雑な気持ちになったくらいですから(笑)。やっぱり自己ベストを出したい、その欲が一番なんです」

――練習で学生と同じメニューをこなすのは簡単ではないと思います。

「最近は疲労の回復が著しく遅くなっているのを感じていますしね。特に夕方からの午後練習のあとの翌日の朝練は、ほとんど体が回復していないというか、アップからバテバテなことも。だから『やめようと思えばやめられるのに、私、何でやめないんだろう』って自問自答しながら笑ってしまうときさえあります(笑)。

 毎日、しんどいです。でも、本当に気持ちも体もついていけなくなったら、監督と"そこまで"という話をしています。幸いまだそこまではいっていないので、いまはもう少しだけ頑張ってみようと思っています」
(つづく)

【profile】
鈴木聡美(すずきさとみ)
1991年1月29日、福岡県生まれ。ミキハウス所属。山梨学院大学在学中の2012年ロンドン五輪で、女子平泳ぎの100メートルで銅メダル、200メートルで銀メダル、400メートルメドレーリレーで銅メダルと3個のメダルを獲得。2016年リオデジャネイロ五輪は100メートルで準決勝進出、400メートルメドレーリレー出場。2024年パリ五輪では100メートル準決勝進出、200メートル4位、400メートルメドレーリレー5位。

フォトギャラリーを見る

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る