池江璃花子、世界水泳の13レース出場に「気持ちをコントロールできなかった」 パリ五輪に向けて種目を絞る決断も (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

【今大会輝いた50mバタフライ】

「今のレース(100m自由形・準決勝)より明日の50mバタフライへ気持ちが向いています。周りの選手と比べるとブランクもあって体力がないので、50mバタフライも今までは準決勝に残れるかなと思っていたけど、明日は全力で『決勝に残れるように』という気持ちで泳ぎたいと思っています。スタートに関してはまだ遅いという劣等感も強いし、戻るには時間がかかると言われていますが、泳ぎはよくなっているので、そこを改善できれば0秒5は上げられる。100mは泳ぎ切るのが精一杯だけど、明日からは50mなので1レース1レースを大事にしていきたい」

 そう話した池江は翌日の50mバタフライ予選で、復帰後ベストに0秒01足りないだけの25秒50で泳いで全体を3位で通過。これまでにないスッキリとした表情を見せた。スタートからの浮き上がりも「サラ選手はまだ全力ではなかったから」とは言うが、隣のレーンで泳ぐ世界記録保持者サラ・ショーストレム(スウェーデン)にそれほど遅れていなかった。

「ふたつ前の組のセンターレーンで泳いだ選手はサラ選手より速いスタートをするので、彼女の水中映像を見てどういう風にキックを打っているか研究しました。私は上半身をなるべく動かさないようにしているけど、彼女は上半身も連動させていいウェーブを作っているので、『必ずしも上半身を固定させてやるのが速いわけではない』と思ってやってみました」

 こうやって他の選手を研究しながら泳ぐ池江は、夜の準決勝もショーストレムの隣でさらに差を縮めるスタート。予選よりタイムは落ちたが組2位の全体5位で、目標にしていた決勝進出を果たした。

「本当にこの日のために頑張ってきたというか。ここで決勝に残れなかったら、ずっと言っていた『世界に戻ってきた』ということを証明できないと思っていました。50mではあるけど、しっかり決勝に残れたことは素直にうれしい。予選より力んで全体的にはうまく泳げなかったですが、サラ選手の反対側にいる選手(メラニー・エニック/フランス)には絶対に負けないぞと思い、最後はタッチ差で交わすことができました。ここで満足するわけではないけど、今後、世界大会の決勝の経験を生かせるようなレースができたらいいと思います」

 だが、好調を維持するのは非常に難しいことだった。翌日の午前に行なわれた50m自由形の予選は、準決勝に進めばバタフライ決勝の十数分後にレースがある。「準決勝に進めるところにいると思う」と意欲を見せていたが、全体20位で敗退。レース後は号泣した。

「悔しいとかツラいではなく、自分でもわからない感情でした。昨日は(50m自由形で)準決勝に残りたいと言ったけど、今朝はレースに出ることのしんどさをすごく感じ、『レースにいくのが嫌だな』と思ってしまって。会場入りしてからは気持ちも入り始めたけど、コントロールができない弱い自分が出てしまってそれを切り替えることができなかった」

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