池江璃花子、世界水泳の13レース出場に「気持ちをコントロールできなかった」 パリ五輪に向けて種目を絞る決断も (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

【多種目挑戦への苦悩】

 前半戦は、まだ自信を取り戻すに至っていない100m種目からスタート。最初の種目は一時世界で表彰台にも肉薄したことがある100mバタフライ。しかし、戦いは厳しく後半の追い上げが効かずに58秒61で17位。0秒05差で準決勝進出を逃した。

「国内の有観客の国際大会は18年以来だったので、雰囲気がわからなくて...。これまでに経験したことがないくらいに過緊張になってしまい、スタート台に立った時は泣きそうになり、気持ちをコントロールできなかったです」

 こう初戦を振り返った池江は、同日4×100mリレー予選の第1泳者を務め、チーム8位での決勝進出に貢献したものの、目標にしていた53秒台は遠く、日本選手権の54秒17にも届かない54秒51。夜の決勝は、前半が26秒07の6番手で折り返す攻めの姿勢を見せたが、後半に失速してタイムを落とし、8番手で第2泳者につなぐ泳ぎに終わった。

「東京五輪はリレーだけを頑張ればよかったけれど、個人があってのリレーだと気持ちが分散されるし、どちらかに響いてしまうこともある。100mバタフライを泳いだあとのリレーは体力的にもしんどかったですが、それでも多種目で選ばれているからには、しっかりすべてで結果を出して期待に応えたいというのはあります。

 ただ、その分空回りしてしまうこともあると思うので、本当に自分ができることを見つけて絞っていくとか、自分が将来的にどうなりたいのかを改めて考えていく必要があるのではないかと思いました。今日はいいレースがひとつもなかったけど、次の100m自由形も準決勝に残れる位置にいると思うので、今日の反省を生かすという意味でも気持ちを入れ直して臨めたらと思います」

 自由形とバタフライで短距離をやる以上、リレーでも重要な役割を果たさなければいけないのは世界標準だ。だが、それを大きな目標にしていた発病前とは状況が変わっていることも自覚している。池江は中2日置いた26日に、混合メドレーリレーの第4泳者の自由形を2本とも53秒9台のラップで泳いで、7位入賞に貢献。翌27日の100m自由形では、予選を16位ギリギリで通過。だが夜の準決勝は順位をひとつあげたものの、スタートからの浮き上がりで隣の選手に体半分離され、54秒86とタイムを落とした。

 それでもレース後は「すごくスッキリしています」と、表情は明るかった。

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