【マラソン】初出場した箱根駅伝、沿道からの「遅いぞ!」というヤジに、浦野雄平は「こんなことを言われるのか...」 (3ページ目)
【箱根5区、駒大・大八木監督からの檄】
その5区、浦野は軽快な走りで、山をすいすいと駆け上がっていった。そして、駒澤大の伊東颯汰の後ろについていた時だった。後方の運営管理車に乗っていた駒大の大八木弘明監督(現総監督)から、なぜか浦野へ檄が飛んだ。
「小涌園前(11.7km)から上がっていく途中、足が攣ってきつかったので駒大の選手の後ろについて休んでいたんです。そうしたら『浦野! お前が引っ張ってやんなきゃダメだろ!』って(笑)。(さらに後方にいる)前田監督の声が届かない状況で、大八木さんの声が聞こえてきて、なんかうれしかったですし、ちょっと元気になりました(笑)。手を挙げて応えたら、大八木さんも喜んでくれたのか、駒大の選手に『浦野と一緒に行くぞ!』と声をかけていました。
大八木さんとは、駒大と一緒に練習させていただいた時に話す機会も多かったので、自分も自然に言葉を受け入れられたんだと思います」
浦野は5区の区間記録を更新し、チームは過去最高の往路3位になった。レース直後、前田監督には「来年も(5区)だな」と言われた。
「正直、『5区は今回限りだったはずなのに......』と思いましたよ(苦笑)。でも、みんなも期待してくれたし、何より自分自身ももっといい走りができるのではという期待がありました。実際、4年時の箱根では(前年の1時間10分54秒を上回る)1時間09分台を設定して、いけるイメージがあったんです。でも、(区間記録を更新したものの)区間3位(1時間10分45秒)に終わってしまい、往路優勝を果たせなかった責任を感じました」
浦野は4年連続で箱根を走り、現在の國學院大の強さの礎をつくった。その経験は競技人生にはどのような影響を与えたのだろうか。
「箱根は高校時代に無名だった自分を、陸上の世界で名が通るぐらいに押し上げてくれました。今も僕が陸上を続けられているのも箱根のおかげですし、競技人生によい影響を与えてくれた。そのくらい大きな大会でした」
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浦野雄平(うらの・ゆうへい)/1997年生まれ、富山県氷見市出身。中学までは野球部で、ポジションはセカンド。富山商業高で本格的に陸上競技に取り組む。國學院大時代には箱根駅伝に4年連続出場し、3年時に5区で区間賞(区間新記録)を獲得。実業団の富士通入社後もトラック、駅伝、マラソンのいずれも高いレベルで安定した結果を残している。マラソンの自己ベストは2時間06分23秒(2025年・東京)。今年2月の大阪マラソンでは2時間06分41秒で8位(日本人4位)となり、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ/2028年ロサンゼルス五輪マラソン日本代表選考会、2027年10月3日開催)出場権を獲得した。前回2023年のMGCは10位(2時間10分41秒)。
著者プロフィール
佐藤俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。
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