【夏の甲子園2026】「あの言葉で報われた」松商学園・ベンチ外3年生は松宗監督の思いをどう受け止めたのか
今夏、長野大会で優勝した松商学園の松宗勝(まつむね・まさる)監督のインタビューが大きな話題になった。
マイクを向けられた松宗監督は、スタンドにいる野球部員に語りかけた。
「スタンドにいる3年生。6月30日のメンバー発表の日に、いろいろ心が揺れ動いたと思います。でも、その時に『チームのために何でもやります』と言ってくれた、その言葉......。連覇の要因は君たちです。これからも豊かな心で、明るい未来になることを信じられますし、そういった人が輝ける社会であってほしいと思います」
応援スタンドでスピーチを聞いていた3年生は、ひとり、またひとりと目頭を押さえ始めた。
松宗監督自身、松商学園で過ごした3年間はベンチ入りを果たせなかったという。グラウンドで戦えない者の思いを理解できる松宗監督だからこそ、ベンチ外メンバーへの感謝の思いがあふれたのだろう。
2年連続甲子園出場を果たした松商学園・松宗勝監督 photo by Ryuki Matsuhashiこの記事に関連する写真を見る
【松宗さんのあの言葉で報われた】
8月11日、松商学園は三重との甲子園初戦に臨んだ。試合前、松宗監督に「優勝監督インタビューの反響はどうですか?」と聞いてみた。すると、松宗監督から意外な「要望」が返ってきた。
「私の反響どうこうよりも、頑張っている3年生がもっともっと讃えられるようになってほしいと願っています。ぜひ、皆さんもそういう選手に声をかけていただきたいです。彼らがこれからの人生を前向きに歩んでいってくれるためにも」
松宗監督の言葉を受けて、私は試合前から一塁側のアルプススタンドへと向かった。
新井煌央(こお)はアルプススタンドの部員のなかで唯一、白いバッティンググラブを両手にはめていた。彼が握るのはバットではなく、太鼓のバチである。
「前まで軍手で握っていたんですけど、やっぱり使い慣れてグリップしやすいバッ手(バッティング手袋)のほうが使いやすいなと変えたんです」
新井はリズミカルに大太鼓を打ち鳴らし、応援のテンポを統率する。今春もベンチ入りを逃し、太鼓を担当したという。
「甲子園という場所で太鼓を叩かせてもらうのは、当たり前じゃないので。長野県の負けたチームの思いも背負って、ここにいるつもりです」
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著者プロフィール
菊地高弘 (きくち・たかひろ)
1982年生まれ。野球専門誌『野球小僧』『野球太郎』の編集者を経て、2015年に独立。プレーヤーの目線に立った切り口に定評があり、「菊地選手」名義で上梓した『野球部あるある』(集英社/全3巻)はシリーズ累計13万部のヒット作になった。その他の著書に『オレたちは「ガイジン部隊」なんかじゃない! 野球留学生ものがたり』(インプレス)『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イースト・プレス)『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)など多数。





















