パリオリンピック・マラソンで男女ともに6位入賞が示す「MGCの効果」とは? (2ページ目)
【鈴木優花は自分のペースを最後まで維持】
順調に練習を積み上げた赤﨑とは違い、8月11日の女子で6位に入った鈴木は、練習ができない期間があり、レース3日前のリモート会見でも不調を口にしていた。彼女を指導する山下佐知子コーチ(第一生命グループ・エクゼクティブアドバイザー兼特任コーチ)は、こう説明した。
「4月の金栗記念あたりから『よくない』流れがあり、5月に左シンスプリント(頚骨の炎症)になった。骨膜にもハッキリ画像が映り、骨膜炎とも軽度の疲労骨折ともいえる状態。そこで練習を2〜3週間休ませて1カ月半くらいで立ち上げなければいけなかったが、これまでに尾﨑好美や田中智美を疲れた状態でオリンピックに出していた反省もあったので、違う方向に振りきるしかないと考えました。
トレーナーやドクターなどの力も借りて疲れを溜めない最低限な練習をさせたが、それで今回は本人の持ち味が出たのだと思います」
鈴木は「スタート前になったら、もういくしかない、自分のやりきったレースにしたいと思い、前についていくことにした」というレースを展開した。
男子と同じように、女子のレースもスローな序盤から徐々にペースが上がっていくなか、鈴木は序盤、30番手あたり。そして15km手前から集団がちぎれるなか第2集団になり、上り基調のコースが始まった16km過ぎには第1集団に追いついた。
28kmからの急な上りコースで8人の集団になると、鈴木は下りになったところで先頭に少し離されたが急な下りで追いつき、平地に入って抜け出した5人に再び離されたが35km手前で追いつく粘りを見せた。
「6人の集団の時はメダルへの欲も少し持ってワクワク感を味わいながら走っていたが、そこで冷静な判断をしなければいけなかったので、引き続き自分のレースをしようと考えていた」
こう話す鈴木は35km過ぎから始まった5人のメダル争いには対応できなかったが、しっかりと自分の力を出しきり、2時間24分02秒で6位を守りきった。
「平坦な場所では、どうしても地力の差があるので、上り坂でペースが遅くなった時にジワジワ追いつこうと考えていたので、最初から急いでつくことはしなかった。自分のいける範囲でレースを進められたことが、入賞できた非常に大きな要因だったと思います」
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