落合晃、久保凛、ドルーリー朱瑛里...高校中距離選手の躍進とパリ五輪の高速化の妙 800m元日本記録保持者が語る関連性とは (2ページ目)

  • text by Sportiva

【理由のひとつはシューズ】

――国内に目を移すと、滋賀学園3年(滋賀)の落合晃選手が7月末の高校総体、男子800mで1分44秒80の日本新記録を出しました。

 僕が引退してから、川元奨選手など何人かが45秒台を出していて、全体的な底上げはされてきたかなと思いますが、44秒台はいませんでした。そんななかで今年は、男子は落合晃選手、女子は久保凜選手(東大阪大学敬愛高2年・大阪)が日本記録を更新しました(1分59秒93)。高校生が一気に壁を超えたことと同時に、世界的にも800mの水準が一気に上がったことが、すごく面白いなと思っています。

 その理由のひとつは、シューズの影響だと感じています。もしかしたら中距離の選手が一番シューズに関して繊細な感覚を持っているかもしれません。僕が最近のシューズを履いて感じるのは、昔の感覚と全然違うということです。そうすると走りを根本から変えていかなければなりません。

 ただ今の高校生たちは、陸上を本格的に始めたころから、もう今のシューズが当たり前にありました。厚底ネイティブみたいな感覚です。そんな選手たちは、走りを変える必要はなくて、動きの壁を感じずに走れているところが、国内で記録が更新された大きなポイントのひとつだと感じています。海外に関しても技術に適応していったタイミングが、このパリ五輪だったのかなと感じる部分はあります。

――記録を更新した高校生が出てきたことは、全体的なレベルアップにつながるのでしょうか。

 それは難しいところがあると思います。田中希実選手のあとに、1500mや5000mで次々と選手が出てきているかというと、そうではありません。女子の中距離で言うと、田中選手は「違う存在」という見方をされてしまっていて、落合選手に関しても、「落合選手だからできている」というマインドを持ってしまうと、差が広がってしまうかなと思います。

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