落合晃、久保凛、ドルーリー朱瑛里...高校中距離選手の躍進とパリ五輪の高速化の妙 800m元日本記録保持者が語る関連性とは (3ページ目)

  • text by Sportiva

【久保凛はニュータイプ】

――若い世代の女子選手で言うと、久保選手のほかにドルーリー朱瑛里選手(津山高2年・岡山)も注目されています。このふたりの走りを見て、どう感じていますか。

 久保選手はバランスがいいですね。スピードもありますし、今年2月の5kmロードレースで、16分22秒で優勝していましたので、長い距離も強いなという印象を受けました。スピード系の800mの選手が長い距離を走るためには有酸素のトレーニングをする必要があるんですが、そうすると、接地時間が長くなってしまったり、関節の可動域が悪くなったり、動きが小さくなったりして800mにつながらないと、男子も女子も僕も含めて、どの選手も口をそろえて言っていました。だから有酸素の開発をやることに抵抗がありました。その観点から言うと、久保選手は日本には今までいなかったニュータイプの選手なのかなと思います。

 それからドルーリー選手は常にチャレンジする姿を見せてくれています。シニアのなかでレースをしたりしていて、そこで失敗したとしても続けていく姿勢を持っているのは大事なことだと思います。彼女の特性を考えると、将来的には1500mに振っていったほうがいいかなと思っています。

――来年2025年9月には東京で世界陸上があり、4年後にはロス五輪があります。日本の中距離界は希望があると考えてよろしいでしょうか。

 希望はあると思います。そのためにも将来性のある選手たちが、国内にある従来の仕組み、実業団や箱根駅伝などのなかで、伸び伸びとやってほしいなと思いますし、しっかりと活用してほしいです。僕もそういう部分に携わっているのでわかりますが、優れた逸材がその仕組みのなかでつぶれてしまったという事実も歴史もあります。そこに関わる人たちには、選手の育成の部分について目を背けないで真剣に向き合ってほしいなと思います。

【Profile】
横田真人(よこた・まさと)
1987年11月19日生まれ、東京都出身。800m元日本記録保持者。現役時代は富士通陸上競技部に所属し、ロンドン五輪に出場する。2016年に現役を引退し、2020年にTWOLAPS TRACK CLUBを設立。選手の育成・チーム運営のほか、アスリートのコーチング、マネジメント、スポーツビジネスに関するコンサルティングも行なう。

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