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箱根駅伝5区の価値を決定づけた3人の「山の神」たち 粘りの走りで総合優勝につなげた会津出身ランナーの記憶も忘れ難い (3ページ目)

  • 和田悟志⚫︎取材・文 text by Wada Satoshi

【柏原に挑んだ早大・猪俣の粘りが総合優勝に】

 柏原が東洋大に在籍した4年間で、唯一勝つことができなかったのが3年時の2011年大会だった。このシーズン(2010年度)の柏原は不調が続いていたが、箱根では約3分の差を逆転し、またしても往路優勝の立役者となった。自身の区間記録更新はならなかったが、区間2位に約2分差をつける圧倒的な走りは健在だった。

 4区を終えた時点で首位を走っていたのが早大だ。大迫傑が1区で見事なスタートダッシュを決め、早大は先頭をひた走った。この年、早大の5区を走った4年生の猪俣英希は、高校時代は5000m15分台とトップクラスとはいえないレベルの選手で早大には一般入学。着実に力をつけて、全日本大学駅伝に続き、箱根に出場するチャンスをつかんでいた。

 当初は2年生の佐々木寛文が5区を走る予定だったが、直前のケガで出場できず、当初9区を予定していた猪俣が抜擢された。同じ福島県出身の柏原に猛追されるのはもちろん計算済み。16km過ぎに先頭を明け渡すと、じわじわと差を広げられた。だが、猪俣も粘る。下りに入ると盛り返し、逆に柏原との差を詰めた。5区で先行を許しながらも27秒差の僅差に踏みとどまったことで、早大は6区で逆転に成功した。そして、黄金期を迎えていた東洋大に21秒差で勝利し、18年ぶりの総合優勝を果たした(同時に史上3校目の学生駅伝3冠の偉業達成)。

 距離は違っても、5区での粘りが勝負を左右することは多い。山の神の活躍に隠れるが、安西や猪俣の粘りは見事だった。奇しくもふたりとも福島県立会津高校出身の"会津の男"。これは偶然か、はたまた......。

著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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