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箱根駅伝に出場する有力3校の戦力チェック 史上最強の駒澤大学を止めるのはどこだ? (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

【「攻撃的なオーダー」で攻める中央大】

 箱根では中央大への期待も膨らむ。
 
 前回の箱根駅伝では総合2位で、往路では駒澤大と30秒差とほぼ互角の戦いを演じた。今季のチームは、その時の往路区間のメンバーが全員残り、エースの吉居大和(4年)を軸に、選手層は分厚い。
 
 だが、出雲はスタートで出遅れた後、立ち直すことができずに7位。全日本は1区に吉居駿恭(2年)、2区中野翔太(4年)、3区吉居大和と前半に主力3人を配置して勝負に出たが、エース吉居が3区11位とまさかの失速。5位から7位に後退したものの、中盤から後半に向けて巻き返し、4位でフィニッシュした。
 
「今までやって来た粘りの駅伝が出せたので、収穫が多い駅伝でした。大和は全日本直前の練習で動いているなって思っていたんです。でも、レース前に硬さが出てしまい、夏の走り込みがコロナの影響などで2週間ぐらい後ろ倒しになったことが影響しているのかなと思いました。大和にはいろんなものを背負わせて、挽回してもらってきたので、この2カ月でしっかり作ってもらい、箱根でリベンジさせたいと思います」

藤原正和監督が言うとおり、全日本は収穫が多かった。 4区の溜池一太(2年)が区間3位、初駅伝のルーキー本間楓が5区5位、駅伝デビューの吉中祐太が6区4位と好走。7区の湯浅仁(4年)は鈴木芽吹(駒澤大・4年)よりも1秒早いタイムで区間2位になった。
 
「湯浅が芽吹くんに1秒差で勝ったことが我々の未来だと思います」

 藤原監督はそう語ったが、この1秒差から自分たちは駒澤に負けていない、自分たちはやれるんだという自信が各選手に伝播していけば箱根での走りも変わってくる。
 
 ただ、対駒澤大では、藤原監督は厳しい表情を崩さない。
 
「(駒澤大は)完璧すぎます。僕らが何かをやらないといけない。こちらが動かないと向こうに変化は起こらないと思う」

 箱根は、前半で駒澤大に逃げられてしまうと早々にレースが終わってしまう。そのため、藤原監督は守りに入らず、全日本同様「攻撃的なオーダー」に動くだろう。吉居兄弟を1区2区に配し、3区は昨年区間賞を獲った中野、4区に全日本4区3位で力がついた溜池、山は昨年5区3位の阿部陽樹(3年)という区間配置が考えられる。

「自信を失った」という出雲から1カ月の突貫工事で戦えるところまで修正した藤原監督だが、箱根まで2カ月間、さらなる成長と調整がハマれば「変化を起こす」ことが可能になるはずだ。

 駒澤大学が出雲駅伝で2位につけた1分33秒の差、全日本でつけた3分34秒差は非常に大きく、このタイム差以上に総合力で差が開いているのを他大学は実感しているだろう。駅伝は共闘ができないが、青学大、國學院大、中央大がそれぞれミスなく戦うことで駒澤大にプレッシャーを掛けていくことが可能になり、それが駒澤包囲網にもなる。それができれば、無敵の駒澤大にも何かしらの変化が生じてくるかもしれない。100回記念の箱根駅伝で青学大、國學院大、中央大を含む他大学は、その変化の波を起こせるだろうか。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

【写真】駒大スポーツ新聞「コマスポ」編集部・インタビューカット集

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