「東京五輪に出ていたらメダルもいけたんちゃうかな。涙が出てきた」マラソン松田瑞生は失意の底からどう立ち直ったのか (3ページ目)
【結婚して得られた安心感】
松田は、昨年9月、結婚をした。「早く子どもを産みたい」とパリ五輪が競技人生のラストと位置づけているが、結婚は松田にとってあらゆる面でプラスに振れた。
「結婚して一番よかったのは、安心感を得られたことです。前はつき合っていると気持ちが不安定になることが多かったんですけど、今は帰る場所があるし、気持ちの逃げ場があるんで、すごくラクなんです。旦那さんは楽観的なので私のネガティブな一面を受け流してくれるので、メンタル的にもすごく支えになっています」
夫のことを語る時、松田の表情は27歳の等身大の女性の素顔に戻る。優しい夫は、今月の誕生日にはアクセサリーや高級ブランドのバッグなどをプレゼントしてくれるという。「幸せで楽しい家庭を築きたい」と語るが、そう語る背景には、松田家のファミリー像が投影されている。
「私の両親は本当に仲がよくて理想の夫婦なんです。そういうのを見て育ってきたので、私も幸せな家庭を築くのが夢でした。でも、これって陸上を始めた時からずっと言っているんですよ(笑)」
松田の性格からして間違いなく明るく、楽しい家庭になると思うが、夫婦間ではすでに育児についてなど家庭内ルールが生まれている。夫からは子どもの前で雑な言葉を使わず、言葉遣いを考えてほしいと言われた。関西弁はフランクで心地よいが、ガサツな感じに聞こえる時もあるから「子どもの教育上」ということなのだろう。
将来、子どもが松田のあとを追いたいと言ってきたら、どうするのだろうか。
「(マラソンは)やってほしくないですね。私と比べられるのがかわいそうでイヤです。期待がその子の知らないところで大きくなって潰されてしまう可能性があるので。どうしてもと言うなら応援しますけどね(笑)」
東京五輪は逃したが、松田はよき伴侶を得て、人生の金メダルを獲得した。残すのは、本物の金メダルだけになる。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
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