箱根駅伝「史上最強の留学生ランナー」イェゴン・ヴィンセントの素顔。コーチが明かす驚愕の進化と留学生ならではの苦労 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【箱根駅伝に向けて「いい状態」】

 しかしながら、今季の駅伝シーズンは、初戦の出雲駅伝を前に左脚のふくらはぎを肉離れし、出雲、全日本大学駅伝と欠場した。

 はたして、最後の箱根駅伝は走れるのか......。

「全日本のあとから箱根にフォーカスして練習ができているので、今の段階ではかなりいい状態です。皆さんの期待、チームの期待に応える走りができるんじゃないかと思います」

 質問に対して、東京国際大の中村勇太コーチはこう答えてくれた。

 中村コーチに話を伺った12月のある日、箱根前の最も重要な練習があった。ケガ明けのヴィンセントは余裕を持って16kmを走ったが、「7、8割にしては、非常にいい出来だった」と中村コーチは手応えをつかんでいた。

 ヴィンセント自身も好感触を得た様子だったという。

「本人も今日の練習はすごく不安をもってスタートラインに立ったと思うんですけど、終わったあとは健やかな表情をしていました」

 どうやら今度の箱根駅伝でもヴィンセントの爆走が見られそうだ。

 中村コーチは、東京国際大で留学生の指導に当たっている。

2022年6月のケニア選手権にて。左から中村コーチ、ヴィンセント、ケニアでのコーチのジョフリー・ロノ氏2022年6月のケニア選手権にて。左から中村コーチ、ヴィンセント、ケニアでのコーチのジョフリー・ロノ氏この記事に関連する写真を見る 実業団・トヨタ紡織マネージャー、愛知の駅伝強豪校・豊川高コーチを経て、2017年に東京国際大コーチに就任。それまでのキャリアでケニア人選手と関わる機会が多かったため、ヴィンセントが入学したタイミングで中村コーチが留学生の指導を担当するようになった。

「日本人選手でも一緒だと思いますが、ストレスを抱えていたり、不安があったりすると、パフォーマンスに非常に大きな影響が出ます。まして留学生となると、身寄りのない異国の地に来て、ただでさえ不安や心配事も多いと思うんです。彼らが余計なストレスを感じずに、気持ちよく走るにはどうしたらいいのか、っていうことを常に考えながら接しています」

 練習メニューを立てる際には、その時々の目標に応じてアウトラインを決めたうえで、本人の意見を聞きながら、設定タイムなどの詳細を詰めていく。

 ちなみに、練習のことなどは英語でやりとりするが、日常のフランクな会話は日本語のことも多いという。

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