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箱根駅伝「史上最強の留学生ランナー」イェゴン・ヴィンセントの素顔。コーチが明かす驚愕の進化と留学生ならではの苦労 (4ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【なんであんなに強いんですかね】

 では、ヴィンセントの強さはどこにあるのか、中村コーチにストレートに聞いてみた。

「今回の取材の話をいただいた時から、ずっと考えていたんですけど、そんなのわかんないよ!って思いました。なんであんなに強いんですかね(笑)。でも、もっともっとポテンシャルがある選手なので、それを引き出してあげなきゃいけないなとも思っています」

 指導者にとっても、未知数の可能性をヴィンセントは秘めているという。

 ケニアは多民族国家だが、ヴィンセントは、男子マラソン世界記録保持者のエリウド・キプチョゲと同じカレンジン族。ただ、キプチョゲが身長167cmなのに対し、ヴィンセントは184cmもある。中村コーチが初めてヴィンセントに対面した時にも、そのシルエットに驚いたという。

「実業団や大学問わず、日本で活躍している選手を見ても、あんなに大柄なケニア人選手って、あまり見たことがなかった。珍しいタイプの選手だと思いました。

 体が大きい分、まだまだ体を使いこなせていないところがあるので、大学4年間で無理をさせない練習をずっと課してきました。一回一回のレースでの負担も大きいので、レースの間隔もなるべく空けるようにスケジュールを組んでいました」

184㎝の長身184㎝の長身この記事に関連する写真を見る 箱根駅伝は、どの区間も20km超走らなければいけないが、にわかには信じがたいことに、大学1年目のヴィンセントは20km以上の距離を走る練習を一度もやっていなかったという。レースペースではもちろん、ゆっくりとしたジョギングペースでも、だ。

 初めて20km以上を走ったのがいきなりの実戦。しかも、箱根駅伝予選会だった。そこではハーフマラソン(21.0975km)を1時間2分23秒で走り、3位という成績だった。その後のヴィンセントのパフォーマンスを知れば、調子がイマイチだったのかなと疑ってしまうが、中村コーチの話を聞いて合点がいった。

 そして、その次の20km超のレースが、あの衝撃の箱根デビューだった。

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