箱根駅伝「史上最強の留学生ランナー」イェゴン・ヴィンセントの素顔。コーチが明かす驚愕の進化と留学生ならではの苦労 (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【知られざる留学生ランナーの苦労】

 その圧倒的なパフォーマンスゆえに、「留学生=助っ人」というイメージが根強いが、中村コーチが強調するのは、彼らの一学生としての側面だ。

「『走るために来ているんでしょ』って言われるのは仕方ないし、そう見られるのも当然だとは思うんです。でもヴィンセントや同級生のルカ・ムセンビ(仙台育英高出身)は、練習が終わって夜9〜10時まで留学生の勉強部屋で、大学のレポートや宿題に取り組んでいたりしますよ。『宿題が終わらない......』なんて言って頭を抱えながら。ヴィンセントはすごく真面目でストイック。実は、留学生はそういった苦労もしてきているんです。

 ルカが通訳をしているのを見て、日本語を勉強していないんじゃないかと思っている人もいるかもしれませんが、彼は聞くほうはほぼ日本語を理解できて、チームメイトとは日本語で会話しています。ただヴィンセントはすごくシャイなので、インタビューなどでは日本語をあまり話しません。

 いろんな意見があって当然なので留学生ランナーへの批判的な意見はなくならないと思うんですけど、彼らは能力が高いというだけで走れているわけではないんです。相応の努力をしてきた結果なんです。彼らが一生懸命頑張っている姿を身近で見てきました。そこはご理解いただきたいと思っています」

 こんなこともあった。例年であれば、ヴィンセントは夏に帰国しケニアでトレーニングをしていたが、今夏は帰国せずに日本で過ごした。その理由のひとつには、大学の授業の補講があった。今季の前半戦は海外遠征が相次いだため、4年間で卒業するには夏に補講を受けなければならなかったのだ。

 学生であるからには学業を疎かにもできない。中村コーチが言うように、彼らがひとりの大学生としての側面を持ち合わせていることを忘れてはならない。

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