東大医学生で三段跳の大学日本一。内山咲良は競技と学業の両立の悩みに「ものすごくいい解決策はない」

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori

文武両道の裏側 第6回
内山咲良(東京大学) 後編
(中学・高校時代を語った前編から読む>>)

オンラインでのインタビューに応える東大医学部6年、陸上女子三段跳の内山咲良選手オンラインでのインタビューに応える東大医学部6年、陸上女子三段跳の内山咲良選手「誰もやったことがないことをしてみせたい」。競技も勉強も両方やりきるーー。高校3年の時、そう心に決めた内山咲良はみごと全国高校総体(インターハイ)に出場し、最難関の東京大理科三類に現役合格を果たした。しかしインターハイでは、全国の強豪を相手に戦えなかった。インターハイでの苦い思い出が、「大学ではインカレ(日本学生対校選手権)で戦いたい」との気持ちにつながったという。

「東大生として戦うのではなく、ひとりのジャンパーとしてインカレで強い選手と伍(ご)していきたい」

 大学では、陸上を生活の中心にすえた。重なるケガにさいなまれながらも自らのトレーニング方法を見直し、大学生活の6年間をかけてインカレ女子三段跳で優勝。陸上でも学生の頂点に立った。東大女子選手として初のインカレ制覇という、前人未到の戦績を収めた内山の持つ強さはどこにあるのか。いかなる手法で、文武両道の前に立ちはだかる壁を乗り越えてきたのか。前編に引き続き、後編でも彼女の勉学やスポーツとの向き合い方を聞いた。

* * *

【頭が真っ白になるくらい頑張る】

ーー2月の医師国家試験を控えた今も陸上に真剣に向き合い続けていますが、ここまで駆り立てる陸上の魅力とはなんですか?

内山咲良(以下、内山)
 陸上は評価がはっきりしているところが、私にとってはとても魅力です。距離がすべてなので、跳んでいる姿が無様でもいいんですよ。自分の能力に足りないものは何だろうって考えて、これだと思ったら、方向を決めてがむしゃらに進んでいく。見直して、また方向を決めていく。その過程が私にとってはすごくおもしろいです。

 方向を決めて計画を立てるのは、本当に頭を使うところだと思っています。ひとりで抱え込んでしまうと本当によくないので、いろんな人に相談をするようにしています。相談をしつつ、自分を振り返りつつ、さまざまな可能性を掘り下げるフェーズはすごく緊張感がありますね。そこで間違えたら、取り組んだ2カ月とかが、反故になってしまう可能性がある。でもだからこそスリリングでおもしろい。そのフェーズでしっかり考えれば結果につながる可能性が高いです。

ーー計画を立てたあと、がむしゃらに頑張るところにも魅力がありますか?

内山
 普通に生きていたら、スクワットで死にそうになったりはしない。そういう身体的な体験はほとんどないと思うんですけど、頭が真っ白になるくらいまで頑張るというか、何も考えずにそれだけを頑張っていればいいっていう。他に何も考えないで、ただそこに集中するという時間は、私にとってすごく大事かなと思っています。ある意味ではストレス発散にもなっているのかもしれないです。

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