神野大地が箱根駅伝で注目したランナー5人とその走りを分析。「めちゃくちゃ攻めの走りで衝撃的」だった1年生とは?

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by アフロ

 今回の箱根駅伝は、往路は激戦となったが青学大が圧勝し、2年ぶり6度目の総合優勝を果たした。ただ、区間ごとの局地戦は激しい競り合いが続き、個々の選手が大きくクローズアップされた大会でもあった。そこで、青学大OBでプロランナーの神野大地に、箱根を走った210人の選手のなかで将来性がある選手、次の箱根に期待したい選手を5名、挙げてもらった。

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國學院大1年の平林清澄。神野は出雲駅伝の時から注目していたと言う國學院大1年の平林清澄。神野は出雲駅伝の時から注目していたと言うこの記事に関連する写真を見る★田澤廉(駒澤大3年)
 田澤選手の走りは、自然と前傾姿勢が保たれていますが、それはトレーニングで完成したというよりも生まれつき、天性のものだと思います。また、強気な発言が目立ちますけど、言ったことをそのまま実現して結果を出していくところを見ると、相応の取り組みをしていることがわかりますし、メンタルも相当強いなと感じます。意識も非常に高く、国内ではなく、常に世界を見すえています。12月の1万mの記録会では世界陸上の参加標準記録をターゲットにしていましたし、狙った試合は外さない。僕が大学生の頃は、実業団の選手に本気で勝とうとは思ったことがなかったですし、田澤選手のように学生のうちから世界へという気持ちも持てませんでした。そういう意味では、意識、実力ともにこれまでの学生界にいないレベルの選手ですね。

 今回の箱根駅伝では2区を走り、1時間6分13秒で区間賞を獲得しました。今回、ひとりで先頭を走れたおかげで、いろんなものが見えたと思います。5分台には14秒足りなかったですが、振り返った時に、あそこで休まなければとか、あそこでもう少し頑張っていればとか、把握できたでしょうし、どのくらいでいけば5分台が出るのかというのがわかったと思うんです。最後は、上りなので、3分10秒ちょっとかかっていたと思うんですが、ラスト3キロは9分30秒でいけば早いと言われています。ラストでどのくらいしんどくて、どのくらいかかったのかもわかっていると思うので、次回の箱根ではその部分を修正して、1時間5分台を出す田澤選手を見てみたいですね。

★丹所健(東京国際大3年)

 2年生の時までは、それほど目立った実績はなかったんですけど、今シーズンの活躍はすごかったですね。出雲駅伝では3区でトップに押し上げる走りで優勝に貢献し、全日本大学駅伝でもケガを抱えながら6区区間賞の走りで、シード権を獲得しました。箱根駅伝では、3区で太田蒼生選手(青学大1年)に最後は抜かれてしまいましたけど、トップに立ち、彼の引っ張る走りからは本当の強さが伝わってきました。記録会やレースでも留学生や外国人選手の前に出て、積極的に走る姿を見たことがあるので、たぶん気持ちも非常に強い選手だと思います。

 走り方も非常に特徴的です。

 スマートな走りというより、大きな筋肉を活かしたダイナミックな走りをしています。体が筋肉質で、腰から脚周りの筋肉は大学生の域を超え、社会人のマラソン選手が行なうような走りこみや、ウェイトトレーニングをやって仕上げたような体つきだと思いました。筋肉が大きければ大きいほど操るのが難しいんですが、それをうまく使えているのもすごいところ。丹所選手の体つきは大きな武器です。

 今からマラソンをやりたいという気持ちがあれば、仮に僕が指導者なら挑戦をすすめることができるだけの体ができています。田澤選手はトラックで世界に挑戦できると思うけど、丹所選手はマラソンで今後、活躍が期待できる選手のひとりですね。

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