2019.09.25

末續慎吾が100m9秒台の日本人3選手を評価。「格が違う」のは?

  • 佐久間秀実●取材・文 text by Sakuma Hidemi

自身の経験から、後輩たちにエールを送った末續氏 photo by Sato Hiroyuki――自我の確立の仕方は、競技生活にどのような影響を与えるのでしょうか。

「集団の中にいる選手は、その集団にまとまりがあって勢いがあるうちはいいんですが、それがなくなっても個を高めていけるのか、と考えると疑問があります。また、桐生選手も小池選手も、五輪が終わったあと、もしくは陸上をやらなくなったあとに存在をどう表現していくのかなと思います。

 僕は長い現役生活を送るなかで、陸上以外の業種の人たちとも話をたくさんすることで表現力の大切さに気づき、それを培うことができました。とくに若い日本人の選手たちは、陸上を通じてどう自己表現をしていくのかを考えるべきだと思います」

――桐生選手は、今年の7月からユーチューブで練習動画をアップするなど、情報を発信しています。

「僕の印象では、ユーチューブで情報を発信する人たちが求めているのは、自分が発信したことへの"共感"だと思っています。でも、アスリートは共感してもらう必要なんてない。アスリートは"疑問に思われてナンボ"で、それが存在価値になります。だから若いうちに、たとえば海外に練習の拠点を移してみるなど、『なんで?』と思われるようなチャレンジをしてもらいたいですね。

来年に東京五輪を控えているから、無理をしないということなんでしょうけどね。小池選手にしても、周囲の期待に応えるかたちで9秒台を出し、さらに大きな期待がかけられていると思います。でも、悪い言い方になるかもしれませんが、『知ったこっちゃない』くらいの気持ちで自分の走りを追求していってほしい。そうして殻を破れば、彼らは次のステージに行くと思いますよ」

――今回の世界陸上に話を移しますが、9秒台の3人が起用されそうな4×100mリレーで、日本チームにどんなレースを期待していますか?

「金メダルを期待する声もありますが、何色でもいいから『きっちりとメダルを獲る』ことが大切だと思っています。リオ五輪(銀メダル)、前回の世界陸上(銅メダル)に続いて表彰台に上がり、日本が"世界トップ3の常連国"であることを示してほしい。それを積み重ねることで、トップ3に入る"再現力"が日本に備わってくると思います。僕も現役時代には先輩方からさまざまなことを受け継いできましたが、彼らもその役割を担ってほしいです」