末續慎吾が100m9秒台の日本人3選手を評価。「格が違う」のは?
【陸上短距離 レジェンドインタビュー】
末續慎吾 後編
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9月27日からカタールのドーハで行なわれる世界陸上は、日本の短距離陣に大きな期待が集まっている。4×100mリレーでの金メダルだけでなく、100m、200m個人でも決勝進出を狙える選手たちが揃っているからだ。
2003年の世界陸上パリ大会で、日本陸上界初となる200mの銅メダルを獲得した末續慎吾に、現在の日本人選手たちの評価、今大会の注目ポイントを聞いた。
世界陸上で活躍が期待される、(左から)小池裕貴、サニブラウン・ハキーム、桐生祥秀 photo by Matsuo/AFLO SPORTS――サニブラウン・ハキーム選手が100mと200mの二冠を達成した、6月の日本選手権をどう見ていましたか?
「アメリカのフロリダ大学でトレーニングを積むサニブラウン選手の"凱旋試合"となりましたが、僕は解説者の立場で見ていました。『日本陸上界に新しい時代が到来した』と言える大会だったと思います」
――また、7月に行なわれたダイヤモンドリーグのロンドン大会100mで、小池裕貴選手が9秒98を記録しました。
「小池選手が日本人の考え方で、国内でトレーニングを積んで9秒台を出したことがうれしかったですね。サニブラウン選手が(ガーナ人の父を持つ)ハーフで、小池選手が純日本人だから、という話ではありません。僕も日本でトレーニングをして海外で戦ってきたので、そのうえで9秒台を出すすごさがよくわかるんです」
――100mで9秒台のタイムを持つ日本人選手は、桐生祥秀選手(9秒98)、サニブラウン選手(9秒97)、小池選手の3人になりました。彼らのほかにも力のある選手が出てきています。
「現在の選手たちとパーソナルな部分で深く接したことはないですが、競技者としてもっとも自我が確立しているのは、サニブラウン選手だと思っています。他の日本人選手たちは、"集団の中で個が確立している"という印象があります。『誰かが頑張るから、俺も頑張る』といったように、周りから刺激を受けることで自らを高めようとしている。
それに対し、サニブラウン選手は『ひとりでも僕は速くなります』というような、いい意味での"個"が確立している。(100mで9秒97を記録した)全米大学選手権の前には『ぶっちゃけ言うと僕対アメリカ、みたいな感じ』と言っていましたが、世界陸上や五輪のような大舞台で、当然のように『ファイナルに残る』というモチベーションでいるのは、彼だけじゃないでしょうか。その点だけでも格が違いますね」
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