「マラソンに向いていないのかなぁ」神野大地が苦しい胸の内を吐露 (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sportiva

 完璧主義者は、神野に限らず、アスリートに多い。計画的で理想が高く、真面目で結果を出そうという責任感が強いのが特徴だ。その一方でミスに弱い。結果が出ないと、『あれだけやってきたのに、なぜ?』とひどく落ち込んでしまう。実際、昨年の福岡、今年の東京、ベルリンとレースが終わった後の神野の落ち込みは中野曰く「非常に激しい」もので、「そんなに落ち込んでどうするの」というぐらい深かった。

 今回はレース後、明るい声で中野に電話をかけてきたというが、あえて明るく振る舞っているのが理解できた。つらい中、ポジティブにいようということが演技でもできたことに、神野の成長が見て取れたと中野はう。

 腹痛問題はまだ解決できていないが、時間は待ってはくれない。福岡でMGC出場権を獲得できなかったので、次の東京マラソンが極めて重要なレースになる。

―― 東京マラソンが大一番になりますね。

「東京マラソンがラストだと決めると自分にプレッシャーをかけてしまうし、そこまで3カ月、MGC獲れなかったらどうしようという思いで練習をしていたらしんど過ぎて練習できなくなると思うんです。だから、今まで通りにやり方を変えずに練習をしますが、1月からケニアに行きます。そこで練習をして自信をつけて帰ってこられたらいいかなと......」

 神野の本音がポツリとこぼれた。自信をつけて帰ってくるということは――。

―― 今、自信を失っている。

「正直、今、落ちています。『マラソンに向いていないのかなぁ』と思ったりするので......。でも、自信を失っているところをもう一度、ケニアで取り戻したい。その上でスタートラインに立ってどうなるか、ですね」

 昨年の福岡国際マラソンから1年間、5月にはプロに転向にし、退路を断って練習をしてきた。4回マラソンを走って、4回とも腹痛が起きて100%全力で走ることができず、結果を得られなければどんな強靭なハートを持つ選手でも弱気になるだろう。

 だが、神野は自分を奮い立たせてケニアに行き、強い自分を取り戻すという。そこにプロランナーとしての意地と覚悟を感じた。

 1月10日にケニア出発し、2月中旬~下旬に現地で東京マラソンの準備を終えて帰国し、3月3日の本番に挑むことになる。果たして、ケニアで神野は自信を取り戻すことができるだろうか――。

(つづく)

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