「肩の荷が下りた」神野大地。東京五輪を目指す心境に変化あり
東京マラソン(前編)
東京駅を背にしたゴールライン。
フィニッシュに至る直線コースに入ってきた神野大地はサングラスを頭にズラし、最後の力を振り絞って走る。ワイルドカードでのMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)出場の権利が与えられる制限タイムは2時間11分42秒。あと200m、そのタイム内にはゴールできるだろうが、神野の表情は苦しさで歪んでいる。それでも足は動き、腕も振れている。
そして、そのままゴールを駆け抜けた。タイムは、2時間11分05秒(総合8位)。
5度目のマラソンでMGC出場の権利を得た神野大地 腕時計でタイムを確認すると、小さなガッツポーズが出た。多くの注目と大きな期待を背負い、なかなか手に入れることができなかった切符をようやく手に入れたのだ。その気持ちが無意識のうちに自然なポーズになって表れた。
「いろんな思いがこもってのガッツポーズでした」
神野は、レース後、そう言って笑顔を見せた。底冷えがする雨空のなか、神野は、ついにMGC出場権を獲得したのである。
東京マラソンに向けた準備は、年明けのケニア合宿から始まった。当初は10日に出発する予定だったが、体調を崩し、1月17日に出発した。出発前、現地での練習メニューを2部練習にするか、3部練習にするか迷っていたが、合宿に入るのが大幅に遅れたため、3部練習にした。東京マラソンで最高の結果を得るために「攻めの合宿」を実践することにしたのだ。
3部練習は、朝5時半に集合し、真っ暗のなか、グループで15キロを走る。後方から車のライトが足元を照らしてくれるが、遅れて車のうしろに行くと真っ暗になるので必死についていく。終わって朝食を摂り、午前中は10キロの各自ジョグ、昼食を挟んで午後は15キロから18キロ走った。ポイント練習が午前中にある場合は、2部練習にした。ケニアではやることもないので夕食を摂ると夜8時半にはベッドに入った。
「3部練習は、それほどキツくなかったです。距離走は、ケニアでは30キロしかやっていなくて、それを3週間で5本こなしました。ペースを決めての30キロ走ではなかったですが、アップダウンの多いところを走りました。前回はフラットな場所があったので1時間45分、3分半ぐらいのペースだったんですけど、今回は1時間52~53分、3分52秒ぐらい。ペースは早くないですけど、標高2300mの高地でタフなコースをしっかり走れたのは、東京マラソンにつながったと思います」
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