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「肩の荷が下りた」神野大地。
東京五輪を目指す心境に変化あり (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 しかし、マラソンはレース前の状態がいいからといって必ずしもいい走りができるわけではない。神野もベルリンマラソンの時は「過去最高のコンディション」だったが、腹痛が起きて人生初の棄権を経験した。

また、レース前はいろんな重圧が両肩にのしかかる。プロになれば結果を出さないといけない責任、そして使命感がある。しかもMGCが獲れていない神野にとって、東京マラソンは国内レースではラストチャンスになる。そのプレッシャーがどのくらい大きなものか想像に難くない。

「帰国して、空港でメディア対応をしたり、昨年の東京マラソンのビデオを見たりしていくなかで、プレッシャーは半端なく大きくなっていきました。MGCの出場権を獲得できなければ、僕が言い続けてきた東京五輪出場の可能性が低くなってしまう。それに自分がやってきたことを結果が出ないまま終わりにしたくなかった。しんどかったですけど、今回は気持ちというか、レースに入る前の心の持ちようがいつもと違ったんです」

 神野の言葉が引っ掛かった。この「心の持ちよう」とは具体的に言うと、どういうことなのだろうか。

「昨年の福岡国際の時は、タイム、順位、遅れてはいけないということがずっと頭にあって、マラソンを楽しむ余裕がまったくなかったんです。でも、今回は100%楽しむところまではいかないですが、50%ぐらいは楽しむという気持ちで臨むことができたんです」

 神野がそういう境地に至ったのは、トレーナーの中野ジェームズ修一の助言が大きかったという。昨年の福岡国際が終わった後、結果を出せずに落ち込んだ神野は今後について相談するために、初めて中野の自宅を訪れた。そこで神野は、中野に素直な気持ちをぶつけた。

「東京マラソンまでガムシャラにやりたい。とにかく頑張って、ケニアで自信をつけたいです」

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