福岡で神野大地に起きたダブル危機。32キロで痛恨ミスを犯していた
福岡国際マラソンが終わって、数日後――。あの42.195キロを振り返った時、神野大地はいつものように丁寧に、明確に状況を説明し、自分の感情を素直に吐露(とろ)してくれた。起きた出来事をポジティブに捉えていたが、突き付けられた現実は相当に厳しく、ときおり言葉の端々や表情に落胆や苦悩が滲み出る。
レースにおける収穫はあったが、MGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)獲得という目標は達成できなかった神野にとって、福岡国際はどんなレースだったのであろうか。
12月2日の福岡国際マラソンで腹痛と低体温症を発症し、29位に終わった神野大地―― 福岡国際マラソンまでの調整はほぼ完璧だったようですね。
「充実した練習ができましたし、栄養面も計画通り調整できてエネルギーも十分でした。レース当日の朝は、腹痛対策としておかゆを摂りました。エネルギーとしては白米がいいんですが、内臓に負担をかけないためです。これは、10月末に久米島マラソンに出た時、1週間、血糖値をモニタリングしたんですが、42.195キロを走っても血糖値はまったく下がらず、エネルギーの心配はあまりしなくてもいいことが分かったんです。それで、消化のいいおかゆにして、あとはバナナと味噌汁を摂りました」
―― 最初の5キロは15分04秒、ペースメーカーの後ろを走り、順調そうでした。
「レースは、ペースメーカーが約3分ペースで刻んでいましたし、暑かったけど問題はなかったですね。走る位置は、最初なかなかいいところが掴めませんでした。僕は、集団の中で走るのが苦手なんです。何回か試したんですが、自分の前後左右に人がいると息苦しくて力みが出てしまう。
で、途中から道路の中央寄りのペースメーカーのうしろがすごく走りやすいのが分かって、そこにいました。ただ、そこは走りやすいんですが、給水の時は歩道側によって行かないといけなくて、その時に周りの人達が急に前にかぶせてくるんです。その時はちょっと危ないですが、やっぱり自分の走りやすいところで走る方がいいかなと(進行方向に向かって)一番右側を走っていました」
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