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福岡で神野大地に起きたダブル危機。
32キロで痛恨ミスを犯していた (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

―― 低体温症は水かけたのが原因だった。

「そうです。でも、(服部)勇馬や川内(優輝)さんは僕以上に体にバンバン水をかけていたんですよ。でも、低体温症にならなかった。そこで窪田さんに言われたのは、『服部選手や川内選手は筋肉量が多いので、体を動かすと体が温まる。でも、神野のように体重が軽い選手は筋肉量が少ないので温まりにくいのだと思う』と言われたんです。あぁー、32キロで(水を)かけちゃったなぁと思って。窪田さんはその経験から暑くなっても体にはかけず、今回も手にしか水をかけなったそうです。これは、自分にとってはすごくいい経験になりました」

 今回は腹痛に加え、低体温症というダブルパンチを喰らい、望んだ結果を得ることができなかった。低体温症は今回の経験を活かして対処できるが、問題は福岡を含めて全4レース中すべてに起きている腹痛である。これまで医学的な検査をすべて行ない、疾患的な要素はなかったことが確認された。また、腹痛対策として缶詰を食べる等々、いろんなことを試してきた。しかし、いずれも腹痛の発症を抑えることができなかった。

 神野のトレーナーである中野ジェームズ修一はドクターをはじめ、他アスリートやトレーナーから腹痛の原因や対処法などを聞いてきたという。それぞれが語る対処法は医学的根拠がなく、個人差もあり、神野にフィットするかどうか分からない。

 それに、腹痛がほぼ100%の確率で起きている現状を考えると、もはや発症させないのではなく、起きた状態のままどう対処していくのかを見つけなければならない。

 中野は「それが非常に大事なこと」だという。

 それさえ見つければ、腹痛に悩まされることなく、42.195キロを走ることができる。フルパワーでまだフルマラソンを走ったことがない神野の能力は未知数だが、MGCに出場できれば大迫傑、設楽悠太、服部勇馬らと対等に戦えるだけの走りを見せてくれるかもしれない。

―― 対処法をいかに見つけられるか、ということですか。

「そういうことです。でも、神野が、それを探せていないのは、まだ経験の浅いアマチュアアスリートだからなんですよ」

 中野は厳しい表情で、そう言った。

(つづく)

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