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福岡で神野大地に起きたダブル危機。
32キロで痛恨ミスを犯していた (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 神野は5.5キロ付近で給水を取った。糖分が少ないスポーツドリンクにしており、これも上尾ハーフで試したものだった。

 気温は20.1度、予想外の暑さに神野のユニフォームは汗で濡れていた。10キロは3009秒、5キロのペースは1505秒、15キロは4515秒、5キロのペースは1506秒、20キロは6017秒、5キロのタイムは1502秒とキロ約3分ペースの安定したタイムを刻んでいた。ハーフのタイムは、6338秒、このままのペースでいけば、2時間8分台を十分に狙える。だが、25キロ付近、神野がちょっと苦しそうな表情を見せ、先頭集団から落ちてきた。

―― 25キロ付近で体に異変が起きた?

20キロから25キロの間、お腹にちょっと痛みを感じたんです。ベルリンで一気にペースを速めた時、痛みがひどくなって治らなかったので、ここは自重しようと少しペースを落としました。それで一旦、うしろの集団で走ることを選択したんです。ハーフまではいい感じでしたし、25キロ地点では先頭とは6秒差、30キロも10秒差で、まだ前が見えていた。これならかなり遅れても10分台でいけると思っていました」

―― 腹痛はあったけど、落ち着いてレースができていたということですか。

「うーん、じつは少し痛みが出た時、『またかよ』と思って気持ちが少し落ちました。走る前は腹痛のことを意識しないようにと思っていたんですが、25キロで少し余裕がなくなってきている中、腹痛が起きたのでそこからは『強い痛みがきたらヤバい』と腹痛のことばかり考えていました。

 しかも、先頭集団から離れてしまったので、このレースでMGCを決めないといけないというプレッシャーを感じたんです。20キロまでは無心で走れていたんですけど、いざ遅れてしまうとクリアするためには何秒でいかないといけないとか、すごく考えてしまった。そのプレッシャーを抱え、腹痛もこれ以上痛くならなければいいなと祈っていたんですが、32キロで痛みが出てしまって......」

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