【月報・青学陸上部】新キャプテン吉永の苦悩。就活、不調、監督と衝突... (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun


 表情にはいつもの吉永らしい明るさがなかった。この頃、大きな悩みを抱えていたという。

「実は3月から4月にかけて、監督の考えに僕がちょっとついていけなくて、うまく連動できていなかったんです」

 吉永は厳しい表情でそう言った。

「監督の理想というか、求めるものと僕のキャプテンとしての理想に差があって......。監督はがむしゃらに自分のためにがんばることがチームのためになり、それがチームにいい影響にもたらすという考えでした。僕は自分の結果が出なくても、チームのために、という考えでチームを運営していたんです」

 第三者から見れば、原監督の考えも吉永の考えも理解できる。

 原監督は自らの経験に基づいた組織論的な視点で、さらに吉永個人の状態が上がらないことと4年生全体がパっとしないことに危機感を覚えたがゆえに、そう発言したのだろう。一方、吉永はキャプテンになったからには自分のやり方でリーダーシップを発揮し、チームをまとめていきたい思いがある。

 チームのために、そして、チームを強くしたい思いは共通だが、その方法論とキャプテン像に違いがあったのだ。吉永は就任時、理想のキャプテン像についてこう語っていた。

「僕の理想は走りで引っ張るというよりも、そこにいるだけでチームの雰囲気が締まるようなキャプテンです。(3代前キャプテンの)藤川(拓也)さん、(2代前キャプテンの)神野(大地)さんは、そういうタイプで、そこにいるだけで僕らはちゃんとしないといけないと思えるキャプテンだった。そういう厳しさを持ち、チームのためになるなら嫌われ者にもなる、そんなキャプテンになりたいです」

 吉永の言う厳しさとは、もちろん部員に対するものもあるが、むしろ自分自身に向けられているような気がする。

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