【月報・青学陸上部】新キャプテン吉永の苦悩。就活、不調、監督と衝突... (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun


 吉永は温和な性格で、気遣いのできる選手だ。その性格ゆえに安藤悠哉前キャプテンは、「あいつは優しいし、すごく気を遣うタイプ。そのぶん、下田ら同学年の選手に厳しく言えるかが心配。とにかく自分の思う通りにやってほしい」と、吉永にエールを送った。

 自分の優しさが徒(あだ)となって優柔不断になったり、仲間に言うべきことが言えないとチーム運営に支障をきたす。吉永はそれを理解していたからこそ、自分に厳しさを求めた。仲間との信頼関係を築くために誰よりも自分を律し、チームのために自己犠牲をいとわず、自らしんがりをつとめようとした。それが吉永の考えるリーダーシップだったのだ。

「最初は悩みましたけど、4月に一度、監督と意識のすり合わせをして、求められているものがだいぶ理解できるようになってきました。今後はその部分を修正しながら、自分の調子を戻していかないといけないと思っています」

 監督との"違い"をならしていく作業と並行し、5月は就職活動でも忙しかった。吉永は卒業後、実業団ではなく一般企業への就職を決めた。そのために就活が忙しくなり、練習にもなかなか身が入らない状態が続いていたという。そうしたさまざまな出来事が彼本来の明るさを失わせ、調子を狂わせる要因のひとつになっていたのだ。

 個人選手権大会前も腰痛に悩まされ、調子は万全ではなかった。

「あまり期待しないでください」

吉永は苦笑いを浮かべてスタートに立ったが、やはり結果は芳しくなかった。自己ベスト(13分49秒83)から1分も遅い14分50秒71と、らしくないタイムに沈んだ。

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