【箱根駅伝2026】名将・大志田秀次氏が語る明大駅伝監督を引き受けた背景と『失敗を経験に』の哲学
明大の再興を託された大志田新駅伝監督 photo by Murakami Shogo
学生駅伝の戦いの舞台に、2年ぶりに戻ってきた。
古豪・明治大学が新たな時代を切り開くべく、箱根駅伝優勝に向けて立ち上げた本格的な強化プロジェクト。その舵取り役を任されたのが大志田秀次氏だ。
中央大ではコーチとして箱根駅伝総合優勝に導き、2011年創部の東京国際大では10年という短いスパンのなかで強豪校へと押し上げてきた。
選手の意見に耳を傾け、そのうえで厳しさを追求し結果を残してきた手腕は、明大でどのように発揮されていくのだろうか。
前編:大志田秀次・明大駅伝監督インタビュー
【『失敗を経験に』という考え方は明大でも変わりません】
「まだ、慣れていないんですけど」
東京・世田谷区の閑静な住宅街に佇む明治大学八幡山第三合宿所。竣工から2年、真新しさと学生たちが寝食をともにする生活感が入り混じる建物の応接室に、大志田秀次・新駅伝監督が紫紺のジャージの襟元を整えながら笑顔で現れた。
1990年代には母校・中央大をコーチとして第72回(1996年)箱根駅伝総合優勝に導き、2011年からの12年間は東京国際大でゼロからのチームづくりに携わり、学生駅伝の強豪校へと育て上げてきた。実業団Hondaも含め、長きにわたりその手腕を発揮してきた名将が新たに挑むのは、古豪・明大の再興である。
明大は第1回(1920年)箱根駅伝に出場した4校のうちの1校で、これまで本戦出場65回、総合優勝は7回を誇る。だが、最後の優勝は第25回大会(1949年)と76年前のことで、その長い歴史のなかで大きな紆余曲折を描いてきた。2010年代に再び上位に絡み始めたが、近年は有力な高校生を獲得しながらも箱根駅伝では低迷が続いている。過去10年でシード権を獲得したのは6位に入った第96回大会(2020年)のみで、昨年度は予選会12位で7年ぶりに本戦出場も逃した。
そのような状況を打開すべく「紫紺の襷プロジェクト~Mの輝きを再び~」が大学主導で立ち上げられた。その名の通り、学生駅伝での輝きを取り戻すと同時に、学校創立150周年を迎える2031年度の箱根駅伝総合優勝が目標に掲げられ、その舵取り役として大志田氏に白羽の矢が立てられた。
「プレッシャーしかないですよ。旧知の人間の多くは、『おめでとう』と声をかけてきますけど、『その言葉は結果が出た時にかけてもらう言葉でしょ』と返しています」と冗談混じりに言う。
今回のミッションを引き受けた背景、明大で描くチームづくりのビジョンはどのようなものなのだろうか。
1 / 4
著者プロフィール
牧野 豊 (まきの・ゆたか)
1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。