【月報・青学陸上部】いま明かす田村和希の失速、下田裕太の激走の真実 (6ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun photo by Nikkan Sports/Aflo


 たしかに8区を走っている下田の表情は楽しげで、その走りは力強かった。12月に捻挫をして3日間、走るのを止められた。そんなことはまったく感じさせなかった。

「ラスト2分42秒ペースで区間新だ。いけるぞ」

 原監督の声が聞こえたが、さすがにその余裕はなかった。下田はトップで9区の池田につなぎ、2位の早稲田大に5分32秒もの差をつけた。タイムは前年と同じ1時間4分21秒で区間賞獲得。今季の不甲斐ない走りを払拭した。
 
 田村和は病院で治療を受けた後、トレーナーの車で町田寮に帰って静養する予定だった。しかし、安藤の最後の走りを見ていたらふと思ったという。

「逃げたらダメだ。やっぱりみんなのところに戻らないと」

 フラフラになって走っている時、原監督に「仲間が待っているよ」と言われた。症状が落ち着いたし、仲間が走っている今、自分だけが町田に帰って休むわけにはいかない。そう思って、チームメイトが待つ大手町のゴールに田村和は還ってきた。

「本当にチームに迷惑をかけたなと思います。体調を崩して休ませてもらったにもかかわらず、監督が信頼してくれて僕を送り出してくれた。それでエントリーされていた林(奎介)が出られなくなってしまったんですけど、嫌な顔ひとつ見せずにサポートや給水をしてくれた。下田もカバーしてくれた。本当にチームのみんなに感謝です。サンキュー大作戦というか、ありがとうって言いたい。これが駅伝の素晴らしさですね」

 田村和は、鼻声でうれしそうにそう言った。

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