【ミラノオリンピック】髙木美帆が吐露した「揺れる思い」 大会を彩った「敗れざる者」たちの物語 (3ページ目)
エキシビションのリンクに立ったマリニンが、大会前よりも輝いて見えたのは錯覚ではないだろう。髙木の言葉とも符合する"どう生きるのか"に到達した時、メダルの価値を越えるのだ。
「(メダルを取るために)我慢という生活はそんなにしてないです」
髙木はいみじくも言っている。
「長くスケート人生を続けているので、昔は我慢だったのが当たり前になって、自分のなかで"制限がかかっている"と思わない生活になり、スケートが人生の一部の4年間だったのかもしれません。今までの過去2大会より好きなことをやってきたのかなって。そういうマインドになっていただけかもしれませんが......やり残したことは、パッと思い浮かぶのはないかなって思います」
彼女はスケートを裏切らずに生きてきた。その矜持は美しかった。
オリンピックとは、その人生そのものに賛歌が贈られるべき舞台なのだろう。もちろん、証としてのメダルは輝かしい。しかし、たとえそれを逃しても、人生をかけて戦った時間は、やがてアスリートを優しく包むだろう。戦った記憶こそ宝なのだ。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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