【ミラノオリンピック】髙木美帆が吐露した「揺れる思い」 大会を彩った「敗れざる者」たちの物語 (2ページ目)
【「やり残したことはないかな......」】
メダリスト会見で3つのメダルを披露する髙木美帆 photo by Asami Enomoto/JMPA「昨日のレース(1500m)が終わってから、メダルに対する思いだったり、オリンピックに対する思いだったり、時間が経つたび、変化していて......。(3つの)メダルを誇りに思う気持ちもあれば、最後1500mを思いどおりの滑りで終えられず、オリンピック自体の思い出が"負けてしまった"で締めくくる感じになったのは、前回の北京と真逆の流れで、いろいろな感情が出てくるのを昨日から繰り返しています。SNSの DMや友人のメッセージを読むたび、『メダルを取るだけではない感動をもらった』って言葉をたくさんいただいて、素直にうれしく思う自分がいて。ただ違う瞬間、結果として取りたかったという思いが出てくる。揺れる感情のなかでの時間を過ごしています」
メダルとメダルでない狭間を、これだけ言語化できる競技者が何人いるだろうか。うれしい、悔しいと、人生をかけた戦いを簡略化できるはずはない。揺れ動く気持ちがあって、それがにじみ出る時、感涙を誘うのだろう。
それは同情とは違う、むしろ畏敬の念だ。
「この4年間で取り組んできたことには誇りに思うところがあって」
髙木は凜として言う。
「その理由は、チームを立ち上げてすばらしい仲間に出会えて、同じ時間を過ごせたことがかけがえのないものになると感じているからです。スケーティングだけでなくて、スケート人生でチャレンジしたことで得られたものでもあると思っているので、その点で充実した4年間だったと思います。でも、挑戦だけで終わりたくない、頑張ることに満足せず、結果に残したいって気持ちもあったから......そう考えると悔しい気持ちが込み上げることもあります」
これぞ"敗れざる者"の境地である。勝負の業深さに身悶えしながら、しゃんと背筋を伸ばし、気持ちを言葉にしていた。
男子フィギュアスケートのイリア・マリニン(アメリカ)は、"4回転の神"という触れ込みで絶対・金メダルを義務づけられながら、信じられない大崩れでメダルを逃すことになった。しかし、奈落の底に落ちた彼は、金メダルに感情が追いつかないミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)を真っ先に祝福していた。競技では敗れたが、人生では敗れていなかった。その生きる姿勢が大きな共感を呼んだ。
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