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競輪・吉田拓矢が自分の優勝よりうれしかったレース、失格で落ち込んだ夜に励まされた過去を明かす (2ページ目)

  • text by Sportiva

【水泳をやめる口実で自転車に】

 吉田は5歳から水泳を始め、小学6年生の時にはジュニアオリンピックのリレー種目でふたつの銀メダルを獲得している。リレーのいち選手であっても、そのポテンシャルの高さは言うに及ばないが、本人は「全然普通の選手。準優勝したのはリレーですし、仲間で獲ったものなので......」と謙遜した。当然のように中学に上がっても水泳を続けたが、どこか物足りなさを感じていた。

「中学ではもう水泳の熱はなかったですね。惰性でやっていました。泳ぐのは苦しいだけで、ただ練習するのが日常化していただけでした」

 高校では水泳を続けたくないと思っていた吉田は、やめる口実を探すようになる。そんな時に思いついたのが、自転車競技への転向。父・吉田哲也(51期/引退)は49歳まで活躍した競輪選手で、自転車競技は身近な存在だったからだ。

質問に和やかに答える吉田 photo by Hirose Hisaya質問に和やかに答える吉田 photo by Hirose Hisayaこの記事に関連する写真を見る 父親は家庭で競輪の話をすることがなかったこともあり、吉田は職業として興味を抱いていなかったが、それを口実にすれば、水泳のコーチも納得してくれるだろうと考えた。

「ちょっとドキドキしながらコーチに言いに行きました。『自転車をやりたいから水泳をやめたい』と」

 言い訳めいた理由で、決して褒められたことではなかったが、ともかく水泳をやめることはできた。それでも吉田は「この時に自分で決断できたことはよかった」と言う。初めて自分の意志を伝えて生きる道を選択できたことに、少し大人になったような気分になり、大きな自信を手にしたという。

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