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競輪・吉田拓矢が自分の優勝よりうれしかったレース、失格で落ち込んだ夜に励まされた過去を明かす (6ページ目)

  • text by Sportiva

【ファンに恩返ししたい】

 吉田は師匠、先輩、仲間との絆を大切にし、その絆を糧にして愚直に努力してきた。そんな彼に競輪の魅力を聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「人間模様がレースに表れますし、人情もあるし、駆け引きもある。面白いスポーツだなと思います。それにがんばった分が自分に返ってくる仕事だと思います」

 同時に吉田は、自分のがんばりがファンの喜びにつながってほしいと願う。

「ファンの方々が車券を買ってくれているから、僕らも走れているわけです。だから極力お返ししたいと思っています。『こいつに入れておけば間違いないよ』『やっぱり吉田は来るよね』と言われるような選手になりたいですね」

 吉田の言葉の端々から、ファンあっての競輪、仲間あっての勝利という思いをひしひしと感じる。自分を引っ張り上げてくれるのも仲間なのだから、優勝して感謝こそあれ、おごり高ぶるのはお門違い。だからその日の喜びは次の日に持ち越さず、次は仲間を助けられるように、そして自分も成長できるように努力をする。そんな思いだ。

 父親は家庭で競輪の話をしなかったが、吉田自身はこの魅力ある職業を5歳と2歳の息子たちに伝えていきたいと考えている。

「まだ子どもは小さいんですけど、お父さんはやっぱりすごいなと思ってもらいたいですよね。自慢してもらえるような選手になりたいです」

 子どもたちふたりが、自分の進路を決める時に、本心から「競輪選手になりたい」と伝える日が今から目に浮かぶようだ。

【Profile】
吉田拓矢(よしだ・たくや)
1995年5月7日生まれ、茨城県出身。高校から自転車競技を始め、3年時には全国高校選抜ポイントレースで優勝し、4km速度競走で6位となる。高校卒業後に競輪学校に入学。ゴールデンキャップを獲得するなど在校成績6位で卒業した。20歳で競輪デビューするといきなり13連勝、S級に特別昇級する。デビューから2年後にはGⅠで初の決勝進出を果たすと、26歳の時に出場した競輪祭でGⅠ初優勝を飾る。2025年5月のGⅠ日本選手権競輪で2度目のGⅠ制覇を達成した。

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