競輪・吉田拓矢が自分の優勝よりうれしかったレース、失格で落ち込んだ夜に励まされた過去を明かす (4ページ目)
【連勝続きにも慢心なし】
吉田は2015年7月のデビュー戦から1着を連発して13連勝を飾り、その後2度2着になるも、そこからさらに9連勝を果たした。同年10月末には上位クラスのS級へ特別昇級。同期のなかでは一番乗りだった。だが彼に慢心はなかった。
「自分をそこまで評価していなかったので、こんなにとんとん拍子で行っちゃっていいのかなという不安を抱えながら走っていました。13連勝した後に、ちょっとホッとしたところがあって、少し停滞したんです。あまり注目されるのが好きじゃなかったのもありました。ただ連勝をしても浮ついた気持ちはなかったですね」
デビューしたばかりの20歳の選手が、先輩選手たちを抑えて1着を獲り続けていれば、気の緩みが出て当然だが、吉田にそんな気持ちは一切なかった。それは師匠である十文字貴信(75期/引退)、身近にいた先輩で関東ゴールデンコンビとして知られた、武田豊樹(茨城・88期)、平原康多(87期/引退)の影響が大きかった。
「練習に対する姿勢、レースに対する臨み方や走り方は、武田さんに一番教わってきました。武田さんは勝っても浮つくようなことはなくて、それを僕は見てきたので、慢心というか、自分に満足したことは一回もないですね」
とくに武田の「自分に対してすごくストイックで絶対に妥協しない」姿勢は、まさに吉田が追い求めている選手像だった。さらに武田からの言葉で肝に銘じていることがある。
「レースで勝っても負けてもその時の気持ちはその日で終わり。次の日に持ち越さない」
それを心に刻み込んだ吉田は、レースの次の日には気持ちを切り替え、黙々と練習に励んだ。そして大きな波もなく順調にステップアップを遂げ、2021年、26歳の時に出場した競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、翌2022年はS級S班として活躍するまでになった。
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