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競輪・吉田拓矢が自分の優勝よりうれしかったレース、失格で落ち込んだ夜に励まされた過去を明かす (5ページ目)

  • text by Sportiva

【ドラマを生んだ仲間との絆】

 どんなに着実に歩んでいても、競輪人生においては大きな壁や深い谷に直面するもの。吉田にとってのそれは2023年8月のGⅠ『オールスター競輪』だった。その決勝で吉田は暴走により失格となってしまう。

「あの時はへこみました。(自分の後ろを走って優勝した)眞杉(匠、栃木・113期)には気持ちよく獲らせてやりたかったので、ちょっと申し訳なかったですね。その日の夜に佐藤慎太郎さん(福島・78期)、高橋晋也さん(福島・115期)、新田祐大さん(福島・90期)、新山響平さん(青森・107期)とご飯を食べて、いろんな声を掛けていただきました。『この先の競輪人生を考えたらいい教訓になったんじゃないか』と言われて、本当に助けられましたね」

 また心に刻んでいた、「次の日に持ち越さない」という言葉も吉田を救ってくれた。なんとか気持ちを立て直して練習に打ち込み、4カ月後、リスタートを切ることができた。

 ただすぐに結果が出たわけではなく、勝ったり負けたりを繰り返し、本調子とは言えない状態が続いた。そのなかで復活のきっかけとなったのが、2024年5月の『日本選手権競輪(通称:ダービー)』だった。決勝で関東勢を引っ張った吉田は、長年指導を受けてきた平原の優勝を見届けて4着に入った。

「平原さんが僕の後ろから優勝したのは、僕の競輪人生でもあれだけうれしいことはなかったというか、自分が優勝するよりもうれしいことでした。デビュー以降、武田さんと平原さんに競輪を教えてもらってきて、平原さんは僕と走るレースで何度かケガをしてしまったことがあったので、ダービー決勝という舞台で、恩返しというか、がんばれたことはよかったかなと思います」

 このレースが「自分の自信にもなった」と言う吉田は、その後完全復活を遂げ、翌2025年のダービーで今度は自身が優勝を果たした。この時も仲間を思うコメントを残している。

「(2023年のオールスター後から)眞杉はずっと僕のことを気にかけてくれて、今回も勝負権のあるところまで連れて行ってくれたので、仲間に助けられて勝てました」

 結局、吉田と眞杉はワンツーフィニッシュ。最高の結果に吉田は満面の笑みを浮かべた。

ダービーの優勝会見で笑顔を見せる吉田 photo by Takahashi Manabuダービーの優勝会見で笑顔を見せる吉田 photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る

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