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伊藤華英が馬淵優佳と語る現役引退と復帰の難しさ。「一度目の競技生活では、最初から最後までずっと辞めたいと思っていた」 (2ページ目)

  • text by Sportiva
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

――馬淵さんは現役復帰という道を選択しました。その理由を改めて教えてください。

馬淵 現役引退後、東京オリンピックに向けて、いろんな大会の解説をさせていただきました。初めて競技を俯瞰して見る側、伝える側として関わったなかで、後輩の頑張っている姿がすごくかっこいいな、アスリートってすごいなと感じました。その時に、野球や陸上の選手から話を聞く機会があって、そんな方々の考えに感銘を受けました。自分の今までの考え方と全然違っていて、自分はなんて甘かったんだろうと痛感したんです。

 自分は本当にやりきれたんだろうか、もっとできたんじゃないかと感じました。そう考え始めたら、いてもたってもいられなくなって......。そんな時に後輩が「一緒にやりませんか」と声を掛けてくれたのが、現役復帰のきっかけでした。

 一度目の競技生活では、最初から最後までずっと辞めたいと思っていて、楽しいと思ったことはありませんでした。好きか嫌いかもわからず、やりたいとも思っていなくて、それがすごくコンプレックスに感じていました。だから二度目の競技生活は、自分で選択して始めているので、成績もすべて自己責任ですし、初めて自分と向き合えたかなと思っています。それが今はすごく幸せで、充実しています。

伊藤 自分自身と向きあって、もう一回スタートを切れるのは、本当にすばらしいことだと思います。お話を聞いているなかで思ったのは、本気で競技を続けることで、これまでの不甲斐ない気持ちが、少し解消されていって、次に辞める時にはきっとやりきったという気持ちを持って引退できるんじゃないかということです。これから頑張ってほしいですし、最後には笑顔でよかったと思ってほしいですね。二度目の競技生活では、目標設定の仕方に変化はありますか。

馬淵 一度目の競技生活では、目標設定をしてこなかったんです。当時は「目標はなんですか?」と聞かれたら、「オリンピック出場を目指しています」と言わなきゃいけない雰囲気でした。実際は、自分には無理と諦めていて、そこまで本気でオリンピックに行きたいとは思っていませんでした。今はパリオリンピックを見据えてやっていますし、そこは明確に目標設定をしています。

伊藤 とても明確ですね。次の目標は来年4月の世界水泳の選考会ですよね。まだ12月ですし、時間がありますよね。

馬淵 いや、もう12月です(笑)。この1年、早すぎて、あっという間でした。

伊藤 ここから大変な練習を積み重ねると思いますけど、自分のなかの考えがしっかりされているので、周りもいろんなサポートをしやすいんじゃないかなと思いますね。

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