アームレスリング世界一の男女が明かす日々のトレーニング。「全然違う」方法で頂点を極めた (5ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • 田中亘●撮影photo by Tanaka Wataru

――ノートを見返すこともあるんですか?

小寺 ありますね。けっこういいことが書いてあるんですよ。でも、書いてあることと同じことをやろうとしても、今ではできないことが多いんです。1年前のことでも同じようにはできないですね。年齢とともに体が変わるから、といったフィジカルが原因ではなくて、神経系というか感覚の問題ですかね。

 僕が思う自分の一番いい時のイメージは2003年の頃。だからそれを再現したいんですが、できないのでその時の最適なものを探っていく。アームレスリングは細かくて、小さい動きでまったく変わるから余計に難しいんですよ。肩の角度にしても、何十通りもありますから。

――フィジカルトレーニングのほかに、技術、テクニカルな練習もされるのでしょうか?

小寺 僕は昔からウエイトトレーニングとテクニックを磨く練習を両方やってきたんですけど、ある頃から「テクニックはもう十分かな」と思うようになって、ウエイトトレーニング中心に切り替えました。ウエイトトレーニングは数値が明確に出るので、それがちょっとずつ上がっていけば強くなっていることを実感できますしね。

山田 私はウエイトトレーニングの数値とアームレスリングがどう結びつくのか、というところには懐疑的なんです。会場で相手と向き合ったら、何も考えずに倒すだけ。野生というか、直感ですね(笑)。逆に考えたらダメなタイプだと思います。

――自分の感覚を大切にしているんですね。

山田 そうですね。結局、何が正解ということはないということだと思います。私は41歳で双子を産んでいるんですが、先ほど話したトレーニング方法で2019年に世界一になった。この先、おばあちゃんになってからでも世界を獲れる気がします(笑)。

――出産の前と後で、パフォーマンスに変化はありましたか?

山田 双子を産んだあとも、練習を再開すれば体も問題なく戻りましたし、「2階級制覇もできるんじゃないか」とも思っていました。ただ、そのあとに5人目を帝王切開で産んでからは大きく変わりましたね。お腹に力が入らなくなってしまって。

――今はアームレスリングに必要なパワーが出ない?

山田 出ないですけど......それでも追い込めば、また世界が獲れると思っています。今はケガもしているので来年に間に合うかどうかも微妙ですが、もう1回獲りたい。いや、獲ります。

(後編:無差別級への挑戦、倒れるほどの減量>>)

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