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「天才ほどいきなりいなくなる」寺本明日香が語る体操女子の難しさと、指導者としての夢「挫折した選手を手助けしたい」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 近藤みどり●撮影 photo by Kondoh Midori

団体戦の勝利の喜びはひとしお

ーー競技人生で、一番の思い出はどの大会ですか?

寺本 やっぱり、リオ五輪の団体ですね。個人戦で結果を出しても個人的にうれしいだけですが、団体戦は違いますね。ただ、リオでメダルも見えた形になりましたが、少し複雑だったんです。あの試合で自分たちは80〜100%の実力を出せたけれど、もともと8位以内を目標にしていたなかでの4位でした。

 だから、「私たち4位を獲っちゃっていいの?」みたいな気持ちにプラス、あともう少しでメダルを獲れた悔しさ、もっと頑張れるのかなという希望と。8割満足で2割の悔しさ、そして少しの希望、といった感じでした。ただ、今だから言えることですが、あのあとは、団体でメダルを獲りたいという気持ちはあったけど、リオ以上の演技を自分たちができるのかなという部分もあって複雑でしたね。

ーー他に忘れられない試合はありますか?

寺本 2011年、高校(名古屋経済大学市邨高校)1年の時のインターハイ団体で、帝京高校に勝って優勝した時ですね。あの時は本当にうれしかった。リオ五輪団体もうれしいけど、全体的に振り返って思い出として残っているのはインターハイやインカレ、全日本ジュニアや全日本の団体戦ですね。個人も成績を残せた試合は満足しますが、楽しかったというのはあまりなくて。でも団体だといつも一緒に練習している他の選手たちと「キャーッ」って言って喜べるし、それが一番ですね。

指導者として世界でのメダル獲得に貢献したい

ーー今後は、どういう形で体操に関わっていこうと考えていますか?

寺本 自分の性格的に、困っている選手や苦しんでいる子に、乗り越えるアドバイスをしたいと思っています。指導者にはそれぞれ得意分野があるけど、私はケガをした選手や、ちょっと挫折している選手を手助けするような役割をしたいです。

 ジュニアのコーチに関しても、選手の強化ができる先生はたくさんいるし、コーチといっても女子の場合は演技の補助をする必要もあるから、体が小さい私では無理だし(笑)。だから私にできることは経験したことを生かした助言だとか、私にしかできない、他のみんながやっていないようなサポートができればと思っています。

 そのためにもまずは、今やってみたいと思うことをいろいろ経験するのが最初だなと思います。全日本が終わってからはまだ、そういったことができるような環境づくりを考えているくらいなので、これからですね。指導者として、世界大会の女子団体のメダル獲得に貢献したい思いはもちろんありますが、私はゆっくりなタイプなので10年後くらいの達成を目指しています。

(終わり) インタビュー前編から読む>>

【プロフィール】
寺本明日香 てらもと・あすか 
1995年、愛知県生まれ。ミキハウス所属。16歳で初出場の2012年ロンドン五輪で団体8位。2016年リオ五輪では個人8位、団体4位入賞を果たした。2019年世界選手権ではキャプテンとしてチームを引っ張り、東京五輪の団体出場枠獲得に貢献。2020年2月に左アキレス腱断裂のケガを負う。翌2021年全日本選手権は6位に終わり、3回目の五輪出場は逃した。2022年全日本選手権を最後に現役引退した。

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