大学中退、アルバイト生活、リオ五輪落選。そこから這い上がったカヌー足立和也「1番以外は目標としていません」 (4ページ目)
「遠征は短い期間じゃないですし、留守をしている時間が長い中、僕のことや競技について理解してくれて、娘を育ててくれているので、感謝しかないです。家にいる時はできるだけ妻と娘と一緒にいたいですし、これからいろんなところに行ければと思っています」
東京五輪前の6月、もうひとり家族が増えた。二女が生まれ、足立のモチベーションのギアがもうひとつ上がった。
東京五輪の舞台は、協力してくれた人やサポートをしてくれた人への恩返しの気持ちが大きいが、個人的には「飢え」を満たし、悔しさを晴らす場でもある。5年前、足立はリオ五輪に出場できず、悔しさを噛みしめた。
「5年前に一度、気持ちが切れました。何も考えられない期間がありましたし、抜け殻のような状態になっていました。でも、気がついたらカヌーに乗っていた。その時、自分の中にまだカヌーに対する情熱があって、この競技で上に上がっていきたいという気持ちはあるんだと、確認できたことで、次の東京五輪に向けてスタートが切れたんです」
リオ五輪では仲間の羽根田卓也がカナディアンで銅メダルを獲った。足立の中に沸いた感情は、複雑なものだったようだ。
「仲間ですし、友人ですし、同じ選手として嬉しかったです。でも、一番最初にやられたと思いましたね。この競技でまだ(日本人として)誰もメダルを獲ったことがない中、その最初の選手になったので、すごく羨ましい気持ちと嬉しい気持ちと悔しい気持ちがごちゃ混ぜでした。でも、次は僕が一番上の景色を見るんだと前向きになれました」
一番上の景色を見るために、準備は整っている。
勝利への飢餓感は、高まるばかりだ。体重はベストの70.5キロ。200グラム以上の誤差を許さず、1日3回体重計にのって合わせてきた。ボートは東京五輪の会場に合わせて作られた東京スペシャルが完成した。
「1年、1年、結果を出して、もっと上へ、勝ちたいと思ってやってきた。1番以外は目標としていません」
足立は、覚悟を秘めた表情でそう語る。
「夢は五輪で金メダルを獲ることです」
小学校の卒業文集に書いた夢を実現する時がついにやってくる。
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