2021.07.28

大学中退、アルバイト生活、リオ五輪落選。そこから這い上がったカヌー足立和也「1番以外は目標としていません」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Getty Images

「飢えています」

 そう語るのは、7月28日に男子カヤック(K-1)予選を迎えるカヌー(スラローム)日本代表の足立和也だ。

 アスリートの競技環境が整えられてきた最近の日本では、「飢え」はあまり聞かなくなった言葉だ。だが、東京五輪の舞台に立つ足立は今も飢えているという。

 その気持ちが芽生えたのは、いったいいつからなのだろうか。

東京五輪で金メダル獲得を狙う足立和也東京五輪で金メダル獲得を狙う足立和也 この記事に関連する写真を見る

 カヌーは全長200 mのコース、激流の中、ゲートを通過し、タイムを競う競技だ。水の流れを読み、ゲートのぎりぎりのところを通過し、90秒ほどで勝敗が決する。スピードがあり、激流の中で自分のボートをコントロールしてゲートを通過していくので、非常に迫力がある。

 足立がそのカヌーを始めたのは、幼稚園の時だった。

 小学校でもカヌーを続け、小学6年の時に初めてスラロームの大会に出場した。中高時代は、カヌーの強豪である駿河台大の学生たちと一緒に練習した。高3の時、18歳以下の世代別世界大会に出場、タイムはトップ3に入り、戦える手応えを感じた。その後、駿河台大に進学し、世界のトップに立つべく練習を継続していた。

 大学3年の時、足立に大きなターニングポイントが訪れる。

「2011年に世界選手権に出場したんです。世代別の世界大会の時、僕はトップを争えるタイムを出していたんですけど、そこで最下位になったんです。たった3年間で、その時のメンバーとものすごい差が開いていて衝撃的でした。この差はいったいなんなんだって」

 ショックを受けた足立は、帰国した後、立ち止まって考えた。卒業まで競技を続けた後に就職するか、それともカヌーだけの道を選ぶのか。

 足立は、ここで人生で最も重い決断を下すことになる。