大学中退、アルバイト生活、リオ五輪落選。そこから這い上がったカヌー足立和也「1番以外は目標としていません」
「飢えています」
そう語るのは、7月28日に男子カヤック(K-1)予選を迎えるカヌー(スラローム)日本代表の足立和也だ。
アスリートの競技環境が整えられてきた最近の日本では、「飢え」はあまり聞かなくなった言葉だ。だが、東京五輪の舞台に立つ足立は今も飢えているという。
その気持ちが芽生えたのは、いったいいつからなのだろうか。
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カヌーは全長200 mのコース、激流の中、ゲートを通過し、タイムを競う競技だ。水の流れを読み、ゲートのぎりぎりのところを通過し、90秒ほどで勝敗が決する。スピードがあり、激流の中で自分のボートをコントロールしてゲートを通過していくので、非常に迫力がある。
足立がそのカヌーを始めたのは、幼稚園の時だった。
小学校でもカヌーを続け、小学6年の時に初めてスラロームの大会に出場した。中高時代は、カヌーの強豪である駿河台大の学生たちと一緒に練習した。高3の時、18歳以下の世代別世界大会に出場、タイムはトップ3に入り、戦える手応えを感じた。その後、駿河台大に進学し、世界のトップに立つべく練習を継続していた。
大学3年の時、足立に大きなターニングポイントが訪れる。
「2011年に世界選手権に出場したんです。世代別の世界大会の時、僕はトップを争えるタイムを出していたんですけど、そこで最下位になったんです。たった3年間で、その時のメンバーとものすごい差が開いていて衝撃的でした。この差はいったいなんなんだって」
ショックを受けた足立は、帰国した後、立ち止まって考えた。卒業まで競技を続けた後に就職するか、それともカヌーだけの道を選ぶのか。
足立は、ここで人生で最も重い決断を下すことになる。
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