人生は自転車とともにある。近谷涼は東京五輪のメダルへの一本道を進む (2ページ目)

  • 川原田剛●取材・文 text by Kawarada Tsuyoshi

「4人の選手の呼吸がほんのちょっとずれただけで、まったくタイムが出ないのがこの競技の難しさです。チームワークを高めるために、普段からなるべくチームメイトと生活をともにして一緒に行動することを心掛けています。そうすることで、お互いに言葉を交わさなくてもチームメイトの調子がわかるようになってきます。あうんの呼吸と言いますが、そういう部分が強化されていきますね」

 2020年、日本で開催されるオリンピックの出場権を獲得し、メダルを手にするためには、チームワークだけでなく、「個々の選手のレベルアップも欠かせない」と近谷は語る。そのために普段はどんな生活を送っているのだろうか? 東京2020オリンピックで自転車のトラック・レースが開催される伊豆ベロドロームに程近い、静岡県三島市に活動拠点を置く「TEAM BRIDGESTONE Cycling(チーム ブリヂストン サイクリング)」に所属する近谷の一日のスケジュールを聞いてみた。

「3日間練習して1日休むというのが基本的なスケジュールです。練習する日は強度と心拍をあげて、目いっぱい足を使うようなトレーニングをします。休みの日は完全に何もしないというわけではありません。自転車と離れる時間を極力つくりたくないので、30分とか1時間でいいので、軽いギアで回す練習をして、自転車に乗るための筋肉を動かすことを心掛けています。

 練習日は、たとえば朝7時ぐらいに起きて朝食を食べた後、8時半か9時ぐらいにはロードのトレーニングに出かけます。それから午後の2時から3時、ときには夕方の4時ぐらいまで走っていることもありますね。距離で言うと、120~160kmぐらい。ナショナルチームの合宿の時はそれこそ一日中、180~200kmぐらいを走ることもあります。

 また、身体づくりのためにウエイトトレーニングを重点的にする日もありますから、そういう時は午前中にウエイトをして、午後にロードに出ます。チームの拠点の三島から伊豆半島方面に行けば、起伏があって、気持ちよく走れるコースがいっぱいあります。それに、トラックの練習をしようと思えば伊豆ベロドロームに行けばいい。最高の練習環境が整っています」

 近谷が今"世界との差"を痛感しているのがフィジカル面だ。とくに純粋なパワーが世界のトップ選手に比べて足りないと感じており、食事を含めた身体づくりに力を入れているという。

「身体ができてくれば、もっとパワーが出ると思います。やはり、海外のトラック競技の選手は体つきががっちりしていますね。僕自身、体重をもっと増やしたいんですが、なかなか増えていかないのが課題です。それに、ただ練習だけをガンガンしていても、逆に痩せてしまいます。練習と食事、そして休養や睡眠などのリカバリー、すべてをバランスよくやっていかないと強くなれません。だから寝るのも食べるのも練習。強くなることだけを考えて、日々の生活を送っています」

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