平昌五輪で金銀メダル独占が見えた。伊藤有希が女子ジャンプW杯初優勝 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之/PICSPORT●写真 photo by Nkamura Hiroyuki/PICSPORT

 そのため、ノーマルヒルのなかでも少し癖の強い宮の森のジャンプ台では、助走で自分のポジションに落とし込むことができず、踏み切るときにジャンプ台に力を伝えきれなかった。踏み切り自体も、いいときのような一発で空中姿勢にまで持っていくことができず、少し重心が後ろにある状態で飛び出していた。結果、飛距離を伸ばしきれず、「空中でも着地でテレマークを入れられるようないい姿勢になっていない」というジャンプになってしまっていた。

 そのイメージは2日目の15日の試技では少し修正できたというが、1本目は高梨の番になると雪が激しく降り出し、助走の条件も厳しくなったため93mで4位に。2本目もそのズレを修正できず89mで順位はそのまま、今シーズン初めて表彰台を逃す結果になった。

「これが世界選手権直前でなくてよかったなと。多分感覚はつかめていると思うんですが、それを安定させなければ試合にはつながらないので、そういう能力が今は欠けているんだと思います」

 本人が、「なかなか助走を修正しきれていないという焦りもあった」と言うように、50勝目を地元札幌で達成したいという気持ちが裏目に出た面もあったのだろう。

 そんな高梨の残念な結果を救ったのが、2歳上で"元祖・天才中学生"の伊藤だった。15年世界選手権では銀メダルを獲得していてW杯も76戦出場しているが、過去2位6回、3位4回。今季も第6戦まで2位2回、3位1回、4位2回でW杯総合では高梨に次ぐ2位につけていたが、なかなか勝ちきれずにいた選手だ。

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