喜びは一筋の涙で。稀勢の里を横綱に導いた亡き師匠の「土俵の美」

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji photo by Kyodo News

 1月22日まで行なわれた大相撲初場所で、大関・稀勢の里(田子ノ浦部屋)が悲願の初優勝と、横綱昇進を決めた。日本出身力士の横綱誕生は、1998年夏場所後の3代目・若乃花以来、実に19年ぶりとなる。

 大相撲初場所で初優勝を果たし、賜杯を手にする稀勢の里 大相撲初場所で初優勝を果たし、賜杯を手にする稀勢の里 新入幕から初優勝までに要した73場所は史上2番目、大関昇進からの所要31場所は昭和以降で最も遅い「スロー記録」、横綱昇進までも新入幕から所要73場所で史上1位の「スロー昇進」となった。30歳6ヵ月でつかんだ賜杯と綱。その裏側には、亡き師匠の教えを愚直なまでに守り抜いた力士としての誇りがあった。

 逸ノ城(湊部屋)を寄り切り、1敗を守った運命の14日目。帰り支度の最中に、結びの一番で2敗の横綱・白鵬(宮城野部屋)が初顔の貴ノ岩(貴乃花部屋)に敗れた。これまでに次点を経験すること12場所。何度も挑みながら届かなった優勝が、ついに現実のものとなった。

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