【月刊・白鵬】横綱が振り返る2014年「3大ニュース」 (2ページ目)
1番目のニュースは、冒頭でも触れましたが、やはり九州場所で通算32回目の優勝を遂げたことです。
かねてから尊敬している大鵬さんの優勝32回という記録は、私が横綱に昇進したときからの夢でした。当初は、目標というよりも、達成できたらすごいだろうな、という感じでしたね。あくまでも、とてつもない大記録のようにしか見ていませんでした。
そうした雲の上の記録を、現実のものとして見定め、目標の"数字"としてとらえ始めたのは、ここ2年くらいのことです。そして昨年、すべての場所が終わったあと、通算優勝数が27回だった私は、「2014年はどこまで優勝回数を伸ばしたいですか?」と問われて、「まずは30回」と答えました。
ただし、その目標は決して簡単には達成できないと思っていました。というのも、昨年は横綱・日馬富士が2回優勝。当時はまだ大関だった鶴竜も、メキメキと力をつけてきていたからです。彼らの台頭を考えれば、年間3度の優勝は相当高い目標設定でした。実際、今年の春場所(3月場所)に鶴竜が初優勝を果たして横綱に昇進。3横綱時代に突入したことで、ますます優勝することが難しくなったと思います。
それだけに、初場所(1月場所)の優勝に続いて、夏場所(5月場所)で29回目、名古屋場所(7月場所)で30回目の優勝を飾ったときは、とてもうれしかったです。同時に、一回、一回の優勝の重みを改めて感じたものです。
みなさんから、「白鵬は勝って当たり前」というふうに見られている部分もあることは十分に承知しています。そう思っていただけることは、横綱として喜ばしいことだと思っています。しかし、本音を言えば、一番、一番、勝つことが本当に大変でしたし、29回目も、30回目も、優勝までの道のりは非常に苦しいものでした。
それでも、30回目の優勝を果たし、秋場所(9月場所)で千代の富士関に並ぶ31回目の優勝を成し遂げたときは、「もうこうなったら、年内に32回目の優勝を目指す!」という気持ちに変わっていましたね。
迎えた九州場所では、場所前から体調もよく、気持ちも充実していました。相撲は一日、一日、そして一番、一番が重要なのですが、そこに向かう準備もしっかりとできていました。まさしく、心・技・体がきちんと整っていたからこそ、32回目の優勝が成し遂げられたのだと思います。
2 / 3