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【セーリング】若きセーラー土居愛実。リオにつながる銀 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 この時、土居は海上の城である自らの艇で体を固定させると、なんと!日傘を広げた。ウェットスーツに日傘......初めてみる組み合わせだ。確かに、海上に影を作るものはなく、他の選手は艇ごと寄り添うようにして、帆で影を作ったりしていた。もちろん日傘をさす選手はどこにもいなかったが、結局、この日は一度陸に上がって待機となった。何が何でも吹いてもらわなければ困る。最終日、土居はトップに1点差の2位につけていたのである。

 初日の3レースを1位-1位-2位という上々の滑り出しでスタートした土居。

「相手をおさえつつ、自分の引きたいコースを引けた」と、自身も手応えのあるレースだったと振り返る。

 そこにピタリとつけているのが中国の張東霜だ。張は世界選手権でも最終日を残して1位につける実力の持ち主。事実上、このアジア大会は張と土居の一騎打ちとなった。

「彼女は軽風では世界一の技術を持っていると思います。そこに挑まなければならないんですが、風が強く吹けば、前に出せるアドバンテージが私にある。彼女の存在を気にしないようにしてますが......気になりますよね、やっぱり(笑)。彼女の背中を視界に入れているよりは自分が前に出てレースをしている方が精神的には楽です。それでも意識しすぎてしまうときは風を見るようにしてます」

 レース中にも気象条件はコロコロ変わる。その度に、攻略法も変わっていく。

「(変化を)読み切ったときはすごく面白いです。たとえば雲が来て、この雲はこうだからどっちに船のポジションを置けばいいとか。本当に経験なんで、私はまだまだ。今欲しいのは、経験と......体重です!」

 メダルの色が確定する最終日の午後。ようやく風が吹き出した。絶好の風とは言えないものの、残り2レースが続けて決行された。

「1点差のアドバンテージを生かして向こう(張)は私を抑えにきた。その点では私の方が劣っていた」

 土居はラスト2レースを3位-3位でフィニッシュ。銀メダルを獲得した。

「目標は優勝だったんで悔しいですけど、目指すのはオリンピックでの一番。この結果も糧にしたい」

 彼女の視線はすでに前を向いていた。

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