2014.10.03

【セーリング】若きセーラー土居愛実。リオにつながる銀

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

9月特集 アジア大会2014の発見!(26)

「海の上に一人でいるのって気持ちいいんですよ」

 レース後にも関わらず満開の笑顔をくれたのは、セーリングのレーザーラジアル級の土居愛実(慶応大)だ。セーリングにレーザーラジアル級が正式に採用されたのは2008年北京オリンピックから。2011年の全日本選手権で優勝した土居は、翌年に18歳の最年少セーラーとしてナショナルチーム入りを果たす。そしてその年のロンドンオリンピックでは日本人として初めてレーザーラジアル級に出場した(結果は31位)。彗星のごとく現れ、21歳になった現在もその可能性を広げている。

今大会、レーザーラジアル級で銀メダルを獲得した土居愛実 彼女が操るのは全長4.23m、全幅1.37m、5.7平方mのセールを備えた一人乗りの艇。セーリングは自然と融合して行なわれるスポーツだ。風を読み、潮を読む。艇を操る技術のみならず、自然を共有しながら、スピードを競う。

「経験がモノを言う競技ですが、天候が急変したりすると、ビリを走っていた人がいきなりトップになったりもする。上手い人が常にトップにいるとは限らない。だからセーリングは面白い!」と土居は言う。

 今回、アジア大会でセーリングの会場となったのはワンサンマリーナ。このエリアは風が安定せず、陸地も近いため、セーリングに適しているとは言い難い。風がない日は海面がぺったりとしたいわゆる”ベタ凪”になることもしばしばなのだとか。そうなるとセーリング競技は行なうことができない。基本的には1日2レースで6日間、計12レースを戦う。

 しかし、実際に競技スケジュールは気象条件によって変更を繰り返した。コンディションが整えば1日に3レースこなす日もあれば、1レースで切り上げざるを得ない日もある。今大会では大会3日目に最大となる4レースが行なわれたが、5日目のレースは風が止んでしまい、延期となった。快晴で迎えた最終日も一度は海に出たものの、風がピタリと止まってしまった。ボートを止め、掲げてあるフラッグを見るも時折そよ風にゆらめく程度。ただひたすら、いつ吹くともわからない風を待ち続ける時間。選手のメンタル維持は大変だ。

「それも込みでセーリング。張り詰めすぎてもダメだし、リラックスしすぎてもダメ。待ち時間がどのくらいになるかわかりませんから」