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【スキージャンプ】
W杯総合優勝、高梨沙羅はソチ五輪でも勝てるか? (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AP/AFLO

 その理由のひとつとして、高梨は飛行曲線が高く、若干上目から着地するため、着地で両足を前後にずらして両手を左右に広げる"テレマーク姿勢"を取るのが苦手だということがある。また小柄であるために、大柄な選手に比べてテレマーク姿勢自体が小さく見えてしまうことも、得点に影響してくる。

 今季からのルール改正でコーチがゲートを下げるリクエストが出来るようになり、それを使って、あえてゲートを下げてゲートファクター(ゲートの位置による得点)をもらい、なおかつ飛距離を伸ばし過ぎないで、テレマーク姿勢を確実にできるところに着地して得点を稼ぐという戦法で勝った試合もある。高梨自身着地技術の向上に努めているが、その作戦を大舞台でうまく使えるかどうかもカギになるだろう。

 それに加え、昨季より確実にレベルをあげてきたヨーロッパ勢が、『打倒・高梨』を合言葉にどこまでレベルアップを図ってくるか、というところも重要なポイントだ。その要素のひとつとして、今季の女子ジャンプではあまり気にしていなかったと思われる、ジャンプスーツ対策がある。ヘンドリクソンの所属するアメリカは、男子選手の活躍がなく、開発はそれほど進んでいないのが現状だろうが、ヨーロッパ勢は別なのだ。男子は+2cmというルールの中で毎試合のように新しいカッティングのスーツを試して、最良のものを見つけようとしている。さらに靴の中の細かい細工などにも力を入れていると聞く。そんな男子で開発している用具のノウハウを、五輪ともなれば女子に導入してくるのは必至だ。そこに日本側としてどう対応していくか。

 今季の総合優勝はまさに、高梨沙羅という個人の力で獲得したものである。だが五輪シーズンはそれだけで本当に大丈夫なのか。彼女の負担を軽減するためにも、日本スキー連盟やジャンプ関係者が、そのあたりまでしっかりと気を配らなければいけないだろう。

 高梨沙羅のW杯総合優勝は、ジャンプの母国を自負するヨーロッパ勢の心に、火をつけたことだけは間違いないはずだ。

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