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【ミラノオリンピック】フィギュア日本女子は転換点に突入 中井亜美、島田麻央......「ポスト坂本花織」の最有力は

  • 小宮良之●取材・文 text by Yoshiyuki Komiya

エキシビションに登場した銅メダル獲得の中井亜美 photo by Sunao Noto / JMPAエキシビションに登場した銅メダル獲得の中井亜美 photo by Sunao Noto / JMPAこの記事に関連する写真を見る

 2月20日(現地時間)、ミラノ。ミラノ・コルティナ五輪フィギュアスケートのエキシビションが行なわれていた。大会を彩った選手にだけ与えられる参加特権で、アメリカのアリサ・リュウは「エキシビションに出るために来た」と豪語するほどの華やかさ。地元イタリアの英雄、カロリーナ・コストナーが氷上に描かれる色彩の光のなかで滑り、宴の始まりを告げた。

 銅メダルを勝ち獲った17歳の中井亜美は、4番手で登場している。真っ赤な衣装で『Don't You Worry 'bout a Thing』を艶やかにパワフルに踊り、エキシビションでも大物ぶりを発揮した。なぜ彼女はこれほど表情が豊かで、何気ない仕草が"バズる"のか。ひとつのタレントだ。

「Amazing Energy!!」

 会場DJはそうアナウンスしていたが、まさに「驚くべきエネルギー」だった。彼女自身が会場の熱を発電しているのだ。

 最後の五輪で銀メダルだった坂本花織は、23番手でリンクに立った。笑顔でリンクに登場すると、衣装のストーンをキラキラと光らせながら、五輪"見納め"の演技で風のように舞った。上半身をそらしてからのダブルアクセルも披露。大きな拍手を浴びていた。

「メジャーなこの曲(『A Million Dreams』)を滑ってみたいと思っていた。競技プログラムの好きな技をちょっとずつ入れて、詰め合わせたプログラムです。今までの感謝を伝えて、自分が"ここでやってきた"というのを最後に見せたいと思いました」

 坂本はそう思いを語った。

 深夜まで続いたエキシビションの余韻は、ひとつの時代の終焉とひとつの時代の幕開けを意味していたーー。

【中井亜美は次のヒロイン候補】

 今シーズン限りで、坂本はリンクを去る。彼女は全日本選手権を5連覇中で、今も実力はトップレベル。彼女の引退は、否応なく新たな時代の"ネジを巻く"ことになるだろう。坂本と同世代の三原舞依、樋口新葉のふたりも全日本選手権でラストダンスを舞った。10年近く、日本女子フィギュアスケート界を支えてきた巨人たちが一斉に引退することになったのだ。

 そう書くと不安がよぎるだろうが、ポスト坂本時代も百花繚乱である。今回の五輪で銅メダルの中井亜美は、最有力のヒロイン候補だろう。

 中井は、爆発的な疾走感やスケート技術、演出が際立った坂本とはタイプが違う。浅田真央の代名詞だったトリプルアクセルを武器に、プログラムの世界観を滑りきるキャラクター力も見せる。ショートプログラム(SP)の『道』で振りまいた笑顔は、主人公ジェルミーナのごとく天使のようだった。特筆すべきは勝負の胆力で、SPは解き放たれた演技で1位だった。

「オリンピックは緊張ゼロ。思った以上に楽しくて、キラキラしている舞台だと思いました!」

 中井はそう振り返ったが、フリーは調子がいまひとつでも攻め抜いてトリプルアクセルを成功させ、土俵際の強さでメダルを勝ち獲っている。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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