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【ミラノオリンピック】「運」を「本物の強さ」に変えた坂本花織 銀メダルの悔しさは未来の教え子に託す

  • 折山淑美●取材・文 text by Toshimi Oriyama

銀メダルを獲得した坂本花織と幼少期から坂本を指導した中野園子コーチ photo by Sunao Noto / JMPA銀メダルを獲得した坂本花織と幼少期から坂本を指導した中野園子コーチ photo by Sunao Noto / JMPAこの記事に関連する写真を見る

【演技後、涙を流し続けた】

 ミラノ・コルティナ五輪、2月19日(現地時間)のフィギュアスケート女子フリー。坂本花織(シスメックス)は演技が終わり、金メダルに届かなかったことを確認してからは泣き続けた。

 2日前のショートプログラム(SP)で坂本は、金メダル獲得へ向け理想的なスタートを切ったと言える。トップに立った中井亜美(17歳/TOKIOインカラミ)との差はわずか1.48点の2位の追いかける展開。最終滑走のプレッシャーもなく、SP3位のアリサ・リュウ(アメリカ)とは0.64点差だが、力を出しきれば逃げきれる状況だった。

 大会当日の曲かけ練習では、リュウがジャンプの練習を抜いたり、他の選手たちも途中で滑りを中断したりするなか、坂本だけは中断せず、すべての要素を滑り通した。平常心で大舞台のフリーに臨もうとしていた。

 6分間練習ではすべてのジャンプを冷静に確認し、本番もその落ち着きは変わらなかった。前に滑ったリュウが合計226.79点として暫定1位に立っていたが、その得点も想定内のもので脅威にはなっていなかった。

「本当にいい緊張感だったし、体の動きも悪くなかった」と坂本が話す滑り。最初からスピードを上げダブルアクセルや3回転フリップを丁寧に決めると、中盤のステップシークエンスでは笑みを浮かべる余裕も見せ、公式練習でミスをしていた3回転サルコウも高い加点を得る完璧なジャンプにした。

 だが、重要な得点源となる3回転フリップ+3回転トーループは、やや跳び急いだのか、最初のフリップで前へつんのめるような着氷となってトーループをつけられなかった。

 その後のダブルアクセルからの3連続ジャンプを含めた各要素は、加点をしっかり得る出来とした。そして最後の3回転ループに3回転トーループをつけてミスのリカバリーも考えたというが、「これ以上マイナスはつけられないし、ループ+トーループは練習でもあまりやったことがない。とにかく残りは確実に決めよう」と実行しなかった。

 呆然とした表情で演技を終えた坂本は、自分の得点が合計224.90点でリュウの得点に届かないとわかると涙した。表彰式後、ミックスゾーンに来たのは試合終了から1時間以上たっていたがまだ涙は止まらず、声を詰まらせて話している途中でもポロポロと涙を流し続けていた。

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著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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