【ミラノオリンピック】「運」を「本物の強さ」に変えた坂本花織 銀メダルの悔しさは未来の教え子に託す (2ページ目)
【「運」を「本物の強さ」に変えた】
「全日本選手権や世界選手権など、ここ一番というところで今まで決めてきた分、なんでここ(五輪)では出せなかったのかなとすごく悔しいです。得点が出た時も『トーループを跳んでいたらなあ、あのトーループの分がなあ』という思いは正直ありました」
坂本がこう話すように、後半に跳んだ3回転フリップの基礎点は4.08点。3回転トーループをつけて連続ジャンプを決めていれば、基礎点は11.11点になっていて勝利していた計算になるのだ。だからこそ悔しさは2倍にも3倍にもなった。
それでも坂本は、北京五輪からの4年間を振り返ってこう話した。
「北京五輪で奇跡的な銅メダルを獲り、そこから4年を経て金メダルを本気で目指せるようまでになっていましたが、それが銀メダルになってすごく悔しい。でも、メダルのランクがひとつ上がっているのに悔しいというのは、この4年間にいろんな経験を積み重ねた成長なのかなと思う。その自分の成長は褒めたいかなと思います」
坂本が北京で銅メダルを獲得した時、中野園子コーチは「運です。彼女は最初の2018年平昌五輪に出た時もそうだったけど、運の強さだけは持っています」と話していた。また北京五輪後、ウクライナ侵攻によってロシア勢が国際大会に出場できなくなった。
「北京のあと、最初に壁にぶち当たったのは直後の(2022年3月)世界選手権でした。いろいろな情勢の変化で、北京五輪上位のふたりが出場できなくなった。それで中野先生からも『あなたが優勝しないとダメなのよ』というプレッシャーをかなりかけられました。そのなかでつかみ獲った金メダルは自分にとってすごく大きな経験になったけれど、頑張りすぎたのか燃え尽きてしまって。そのあとの3年間は本当に大変なシーズンでした」
苦境のなかで自分の苦手な分野や新しいジャンルの曲にも挑戦し、自分の得意・不得意を見極めたうえで、ミラノ・コルティナ五輪での戦い方を定めようとした。そんななか世界選手権3連覇を達成できたのは、彼女が持っていた運の強さだけではなく、それを本物の強さに変えていったからだ。
昨季は精神的な疲労が極限まで積み重なったなか、世界選手権では一度引退して競技に復帰したばかりのリュウに敗れて2位になり連覇は途絶えた。だが、それも彼女にしてみれば、「世界一」を背負わずに五輪に臨めることになったと見れば、運の強さなのかもしれないと思えた。
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