【ミラノ五輪】マリニン「これがオリンピック」 敗北の王者に見たスポーツマンシップと一流選手の資質 (2ページ目)
【4回転の神も抗えなかった引力】
冒頭、マリニンはそこまで悪かったわけではない。4回転フリップはしっかり降り、GOE(出来ばえ点)も稼ぎ、15.71点のハイスコアだった。次のアクセルがほどけてシングルになったが、高難度の4回転ルッツもやはり15点台後半を叩き出した。
しかし、ここから波に乗れない。4回転ループは2回転、4回転ルッツは転倒し、4回転サルコウは2回転になって転倒。スケート全体がチグハグで、演技構成点の表現・演技力の項目は7点台だった。
「メダル獲得ができるとはまったく思っていなかったです。(マリニンのミスは)珍しいなと思って。今シーズンはミスがなかったので、(要因に)団体と個人のスケジュールもあったのかなと。マリニン選手のおかげで、自分たちもここまでこられたところもある」
佐藤は、自身のメダルと超人マリニンへの思いを重ねて語っていた。マリニンが氷上に立った時点では3位で、表彰台に上がれないことは覚悟していたが、全力を尽くしたうえでの僥倖(ぎょうこう)だった。
マリニンの大崩れは、ともに戦ってきた選手ほど信じられない現象だった。そのジャンプは神のごとし。たとえ1本、あるいは2本がダメでもリカバリーできるほどの得点力を誇っていた。
「ジャンプのスキルでマリニン選手にかなう人は、下手したら数十年いないと思うくらい。来年以降はマリニン選手が1強になる可能性は高いですね」
2023年のGPシリーズ・NHK杯が終わったあと、宇野昌磨が啓示的に語っていたのを覚えている。
「結局、フィギュアスケートはジャンプを跳ばない限りは得点が上がらないというのがあって。NHK杯でマリニン選手と僕の演技構成点の差は6.10点でしたけど、それはもう"ジャンプお手つき分"くらいなんです。マリニン選手はあれだけジャンプをきれいに跳べるし、一番確率よく跳んでいるので、彼に勝つには同じぐらいのジャンプを跳ばないと......たぶん、今後は勝てる人がいなくなってしまうのが現状だと思います」
その予測は慧眼だったが、勝負は蓋を開けないとわからなかった。そこにフィギュアスケートというスポーツの奥深さがある。わずかな感覚の狂いで総崩れ。何者にも抗えないような引力が働いた時、マリニンのような神でもなす術がない。
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